箱庭療法は他国と比較し日本において多用されており、日本のカウンセリング場面において重要な役割を担っている。箱庭療法はそれを作製すること自体が治療であり、カタリシス効果があるとされている。また、箱庭を作製する際のアイテム選択、アイテムを設置する順番、設置する速度などを観察することにより、クライアントの持っている抑圧されている無意識や人間関係の葛藤といったクライアントの内面が表出されるとされる。このような情報を得る手段としてビデオによる録画結果をビデオで観察しなおすことが考えられる。しかし、ビデオの観察結果を客観的に測定する研究はあまりなく、人の目による行動判定が一般的に主な観察結果の分析手段となっている。 本研究では、工学的手法を用いて箱庭療法の作製過程を明らかにし、対象者に対する深い理解を促していくことを目的とした。さらには、作製過程のパターンからの被験者の自動類別化も視野に入れた。そして、日本において行われることの多い箱庭療法の米国における妥当性を検討すると同時に、日本と米国との箱庭療法の作製過程に関する比較も行った。 本研究では、前述のように、被験者の作製過程の行動パターンにも無意識を反映した重要な情報が含まれると考え、心理学的観点からの知見と情報工学の技術を融合し、作製過程において心理学的に意味のある情報を抽出することができた。抽出したデータを工学的手法で解析し、分かり易くグラフで視覚的に呈示することも行った。さらに、グラフのパターンにタイプが有り、それが被験者の性格などを表すことが分かった。このような研究事例は国内外でも他になく、心理と情報の融合の新たな研究分野の展開と言える。 今後は、開始当初の最終目標であった、箱庭の作製過程の行動パターンを示すグラフの分類にグラフ文法の手法を用いて、グラフの型判定の自動化などを目指す予定である。
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