昨年度開発した多次元の点過程モデルに関する新しいベイズ同時予測方法に関して情報幾何学的な視点からの研究を行った.Kullback-Leiblerダイバージェンスに基づき予測分布の性能を評価した.調和時間(harmonic time)の概念を導入し,多次元のポアソン過程を,同時予測問題を調和時間に基づく非斉時ポアソン過程の予測問題として定式化しなおすことにより,予測問題がある損失関数に基づくパラメータの推定問題に帰着することを明らかにした.このとき,予測を考慮に入れたある計量(predictive metric)が各調和時間において定義される.この計量は観測量と予測量が同じ分布にしたがう場合には,情報幾何学において基本的なFisher-Rao計量の拡張となっている.新たに提案した予測性能の優れた事前分布とジェフリーズ事前分布との比が,予測を考慮に入れた計量のもとで,任意の時刻でモデル多様体上の正値優調和関数となっていることを示した.さらに,同時予測分布を数値的に評価するプログラムを開発し,モデルの次元が大きい時に提案した事前分布を用いることによる改良の効果が非常に大きくなることを明らかにした.また,ベイズ予測で現れる多変量確率分布が従来知られていなかった多変量の離散確率分布となることから,この確率分布族に基づく統計モデルを利用する研究を進めた.さらに,前年度に引き続き,連続的な信号の入力に対し点過程を確率的に出力する入出力システムモデルに関する研究開発を進めた.
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