研究課題/領域番号 |
23650145
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
狩野 裕 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (20201436)
|
研究分担者 |
小林 康 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (60311198)
乾 敏郎 京都大学, 情報学研究科, 教授 (30107015)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 国際研究者交流(米国) / 国際研究者交流(英国) / 認知心理学 / スパースコーディング / 高次元データ解析 |
研究概要 |
1.研究集会の開催.独立成分分析(ICA) とスパースコーディング,因子分析における因子回転,統計的正則化法に関する研究集会をH23年11月に大阪大学において開催した.R.I. Jennrich 教授(UCLA)とNickolay T. Trendafilov教授 (The Open University, UK) を海外共同研究者・特別招待講演者として招聘し基調講演をして頂いた.主要研究テーマとして次の4つを設定した.(1) Factor Rotation and Sparseness (English session),(2) シンボリックデータ解析,(3) 統計的正則化理論と神経生理学,(4) 生物統計・生物情報.多数の参加者を得,有意義な意見交換がなされた.2.視覚情報処理と「モデル適合+正則化」の研究の推進.高次元因子分析モデルのLasso推定法の開発を進めた.3.動的スパースコーディングによる脳内強化学習の研究.哺乳類の脳において大脳基底核はドーパミンを介した強化学習を行う神経回路と考えられている.中脳ドーパミン細胞が,動物の内的状態の情報の時間的エッジと報酬信号の差(報酬予測誤差)を教師信号として大脳皮質・基底核の予測の更新を行っており,これは一種の機械学習と考えられる.報酬予測誤差をコードするとされるドーパミン細胞には,脚橋被蓋核(PPTN)と背側縫線核(DRN)の入力がある.PPTNとDRNが動的情報としてどのような情報を計算しているかを眼球運動課題および古典的条件付け課題を訓練したサルのデータを用いて検討した(昨年10月に研究総説を発表).アセチルコリン系, セロトニン系とドーパミン系の生理学的知見から得られた相互関係をもとに,時間に依存する正則化項を導入し,ナイーブなスパースコーディングの拡張を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年9月に開催した研究集会「生命科学と統計学」では,生命科学者,認知心理学者,統計学者,機械学習の専門家が集結しきわめて有意義な議論を行うことができた.玉川大学脳科学研究所との共同研究を開始し,大阪大学・NICT・ATRによる脳情報通信融合研究へと昇華させる可能性も出てきた.
|
今後の研究の推進方策 |
1.因子回転の脳科学的解釈と新たな因子回転法の開発.Archer and Jennrich(1973)の因子回転の方法とスパースコーディングの関係を精査する.注意すべきは,因子回転におけるスパースコーディングは基底自身のスパース性を問題にしており,コード(座標)のスパース性ではないことである.脳科学の観点からスパースコーディングと因子分析の解釈可能性をどのように関連付けることができるのか.認知心理学や生理学の専門家とブレーン・ストーミングを行う.以上の研究をもとにして,新たな因子回転方法を開発する.2. 統計科学・機械学習における「モデル適合+正則化」の再検討.「モデル適合+正則化」は,予測誤差最小化に基づくモデル選択,ベイズ推定,ペナルティ法において登場する.統計科学や機械学習においては,識別可能なモデル適合が典型的であり,過学習を防ぐ意味で正則化項を導入する.しかし,識別可能でないモデルに対処するため正則化項が導入されることもある.因子回転では,この問題を統計科学的な枠組みから外し,解釈可能性という外部情報を用いて解決したが,それはスパースコーディングの考えを利用している.以上の下で,統計科学における「モデル適合+正則化」の意義を脳科学に問いたい.正則化は単なる数学的道具にすぎないのか.実質科学としての正則化の役割を解明したい.3.脳活動測定技術と計量心理学の融合研究の促進.fMRIなどの脳活動測定データの分析方法の開発は焦眉の急である.この分野での最も大きな課題はシグナルより過大な雑音の処理である.そして,この課題に計量心理学的アプローチが有効であることが分かってきた.萌芽研究として,両分野の融合研究を推進し,新たな地平を開拓したい.4.動的スパースコーディングによる脳内強化学習の研究.昨年度の研究の継続.
|
次年度の研究費の使用計画 |
・研究集会・研究打合せ等における旅費・会議費・会場費・高次元正則化モデルに関するシミュレーション研究のためのPCの購入・強化学習を神経生理学的に研究するための計測機械と消耗品・本研究で得られた研究結果を国内外の研究集会発表するための旅費
|