研究課題/領域番号 |
23650151
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
元池 育子 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 助教 (70347178)
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キーワード | 樹状構造 / 反応拡散 / 信号伝播履歴 |
研究概要 |
初年度に検討を行った樹状構造形成に関する知見をもとに、枝を伸ばす加算型樹状形成と、ランダムに初期ネットワーク構造が与えられたのち、入力に応じて樹状に刈り込まれていく減算型樹状形成について、それぞれ系の特性を検討した。その結果、今年度の研究進捗の範囲では、枝の生長方向についての自由度が高いのは加算的成長系であることが自明であろうと考えられたが、加算型では場との相互作用の関係から、枝成長の進展は容易であるのに対し、後退は場の変数に外部からの摂動が必要であること、また枝形成がランダムネットワークの初期構造に規定される減算型樹状形成系の方が、メカニズム上信号転送量に応じて径が動的に変化するメカニズムを反映させやすいことが示された。この結果は、樹状の刈り込みを実装する際に有用な知見となると考えられる。また、保存量といった系全体を代表する定量化の試みについては、樹状構造自体の容量、及び信号が伝播される経路の容量及び時間の単純な関数を仮定して検討を進めている。 また、今年度は3次元系での樹状構成及び信号伝播系の構築について検討を行った。当該系は基本的に樹状構造形成変数に加え、時定数の異なり得る信号伝播に関する変数を内包するため、計算資源を比較的多く必要とするが、計算過程及び計算結果の可視化に関するアルゴリズムを工夫することで、3次元への拡張系における計算可能領域(樹状サイズ)を増やすことに成功した。 信号伝播パターンと機能との関連に関しては、3次元樹状系となった場合、二次元系に比べ、分岐点における信号伝播の多様性が低く、樹状経路が一様な導線となっている率が高く、3次元系での信号伝播の多様性を得るための条件を検討している段階である。2次元系と同様に3次元系でも分岐点における信号伝播の多様性を確保することで、より動的な信号伝播パターンが得られると考えられ、次年度の課題の一つとする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
3次元系への拡張において、パラメータの同定に思いの外時間が掛かったことと、信号伝播履歴の樹枝径への反映について、樹状形成全体のメカニズムにさかのぼって検討を重ねたため、径全体の動的パターンの定量化についてはまだ緒に就いた段階であるため、遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたるため、現在進行中である動的樹状構造及び信号伝播パターンの変化から、特徴的なパターンを抽出し、径の保存量を用いた比較を行う。その過程で、信号が伝播しない経路は刈り込まれていくというダイナミクスを用いて、入力信号の時空間パターンと、経時的な樹状パターン変化との対応付けを行い、経路形成・維持にかかる効率の評価を行う。またその評価に基づき、より効率のよい時空間パターンの模索を行う。同時に可能であれば、生体分子における実験系での当該系の実証について、検討を行う。また、本申請研究全体で得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請時に想定したものより、特に3次元系において計算資源を必要とすることが判明したため、小サイズの計算機を増設する予定である。また、大量のデータ保存を外付けHDD等を購入し、行う予定である。
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