研究課題/領域番号 |
23650158
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
高橋 晋 京都産業大学, コンピュータ理工学部, 助教 (20510960)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 海馬 / 細胞体 / 樹状突起 / 場所細胞 |
研究概要 |
本年度は、垂直に配置された複数の計測点を持つシリコン電極を設計し、それを用いてマルチ(多数)ニューロン活動を長期間安定して記録する方法について、電極の設置方法や手術法を中心に改良した。具体的な方法は下記のとおりである。1. 既存シリコン電極は、25micron間隔に垂直かつ一列に並んだ計測点を持つが、細胞体は10micron程度の大きさがあるため、樹状突起と細胞体を区別するには分解能が不十分である。本研究では、10micron以下の計測点間隔をもち、計測点列を二重化したシリコン電極を新たに設計した。2. 電極先端近くの全てのニューロンの活動をもれなく検出するため、専用の電極制御装置(マイクロドライブ)をPCB(プリント基板)技術とコンピュータ制御のNC旋盤技術を応用して、設計・開発した。3. マルチニューロン活動を長期間安定して記録できるように、マイクロドライブと記録用の前置増幅器(ヘッドアンプ)の間を柔軟なタングステンワイヤーで接続した。タングステンワイヤーを緩衝材として利用することにより、マイクロドライブへの振動伝達を最小限に抑える工夫を施した。 これらの基盤技術を核とすることで、細胞体、基底樹状突起(basal dendrite)、尖端樹状突起(apical dendrite)それぞれを弁別する精度が向上できると期待される。そして、来年度に実施する動物実験を行うことで、単一ニューロンの細胞体、基底樹状突起、尖端樹状突起それぞれにおける場所情報表現の違いと、それらの間で行われる情報変換について解明する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、本年度中に「マルチニューロン活動記録法をシリコン電極用に最適化する技術開発」と「データ解析方法の改良」を実施する予定であった。「マルチニューロン活動記録法をシリコン電極用に最適化する技術開発」に関しては、当初の計画通りに進展しているが、「データ解析方法の改良」については「マルチニューロン活動記録法をシリコン電極用に最適化する技術開発」において、シリコン電極の設計に手間取ったため、計画が遅れた。そのため、「やや遅れている」という評価になった。
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今後の研究の推進方策 |
シリコン電極の設計に時間がかかり、今年度に予定していたシリコン電極の発注が遅延したため、研究費を繰越した。次年度は、繰り越した物品費をもとに独自設計のシリコン電極を購入し、シリコン電極から計測されるデータに対応した解析方法の改良を行うとともに、ラットが1m×1mの実験ボックス内で餌を求めて行動している際に、海馬CA1野の錐体細胞のニューロン活動を計測し、単一ニューロンの樹状突起が受け取った多様な情報がその細胞体で統合され出力される一連の処理を、実際に情報処理をしている脳を用いて明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、今年度に繰越した研究費をもとに独自設計のシリコン電極を購入するとともに、ラットが実験ボックス内で餌を求めて自由に行動している際にニューロン活動を記録するために必須となる防音シールドボックスを新たに購入する。他には、電極作成材料とラットなどを購入する予定である。
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