研究課題/領域番号 |
23650159
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
石崎 泰樹 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90183003)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 虚血 / 白質梗塞 / 内皮細胞 / オリゴデンドロサイト / 再生 / 脱随 / 前駆細胞 |
研究概要 |
申請者は様々な白質障害疾患に対応すべく、新たな治療法の開発を目的として、細胞移植により白質障害の機能を改善させる治療法の開発を目指してきた。その過程で、脳微小血管内皮細胞を梗塞巣に移植するといったん脱髄した軸索の再髄鞘化が劇的に促進されることを見出したが、その分子基盤は未だ全く明らかでは無い。本年度は血管内皮細胞が働きかける標的が神経軸索か、オリゴデンドロサイト前駆細胞かを決定するために、以下の実験を行った。成体ラットの内包に定位的にエンドセリン-1(ET-1)を注射、微小血管攣縮を介して内包に白質梗塞を生じさせ、一週間後、成体EGFPトランスジェニックラット脳より単離・培養した微小血管内皮細胞(MVECs)を定位的に梗塞部位に移植、さらに一週間後、動物を屠殺し、大脳を摘出、その切片を作成し、LFB染色で髄鞘染色を行い、再髄鞘化を評価した。対照としては成体EGFPトランスジェニックラットから調製・培養した髄膜細胞(MCs)を用いた。その結果、MVECs移植群では対照のMCs移植群に比べて有意に脱随軸索の再髄鞘化が促進されることが確認された。次に、MVECs移植時に再髄鞘化が促進されるのが、血管内皮細胞により(1)神経軸索が対照群に比して正常に近く保たれるためなのか、(2)神経軸索の変性は対照群と同様に起こるが、オリゴデンドロサイト前駆細胞の生存・増殖の促進、髄鞘化オリゴデンドロサイトへの最終分化の促進など、オリゴデンドロサイト前駆細胞を介して起こるものなのか、を検討する目的で、この白質梗塞モデルにおいて、神経軸索の変化を抗タウ抗体、抗ニューロフィラメント抗体を用いて組織学的に解析、MVECs移植時に神経軸索がMCs移植時に比べて正常に保たれるか否かを検討したところ、両群で大きな差違は認められなかった。このことから上記(1)の可能性は否定され、上記(2)の可能性が高いことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血管内皮細胞が軸索の再髄鞘化を促進する機構が、神経軸索の維持によるものでは無いことを明らかにしたので、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
血管内皮細胞が、オリゴデンドロサイト前駆細胞を介して軸索の再髄鞘化を促進する機構を明らかにする。具体的には幼弱ラット大脳よりオリゴデンドロサイト前駆細胞を調製、これとラット大脳より調製した脳微小血管内皮細胞を共培養し、オリゴデンドロサイト前駆細胞の生存・増殖・最終分化に及ぼす効果を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の研究を推進するために大部分を消耗品の購入に充て、一部は旅費、謝金に充てる。
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