研究課題/領域番号 |
23650160
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
上阪 直史 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70597624)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | シナプス刈り込み / 蛍光タンパク / イメージング |
研究概要 |
発達期の脳内でおこる必要なシナプスの強化と不必要な入力の弱化及び除去の細胞機構を解明するために、本研究では、小脳登上線維-プルキンエ細胞シナプスの生後発達を対象とし、新規マルチカラーリアルタイムイメージング法の確立を目指している。平成23年度は、プルキンエ細胞や、シナプスに隣接するグリア細胞に特異的に蛍光タンパク遺伝子を発現させる方法を確立した。プルキンエ細胞特異的に機能するプロモーター(L7)の下流に蛍光タンパク遺伝子を挿入したウイルスベクターを作製し、注入した結果、プルキンエ細胞特異的に蛍光タンパクを発現させることに成功した。またグリア細胞特異的にウィルスが導入される条件を検討した結果、グリア細胞にも特異的に蛍光タンパクを発現させることに成功した。また、登上線維のみ、蛍光タンパク質を発現させるために、小麦胚芽アグルチニン(WGA)を用いた方法を試みた。WGAは、経シナプス的に神経細胞間を移動することができ、神経回路のトレーサーとして使われてきた。この性質に着目し、WGAとCreの融合タンパク(WGA-Cre)と赤色蛍光タンパクであるtdTomatoとをウイルスベクターを用いて小脳プルキンエ細胞に特異的に発現させ、WGA-Creを経シナプス的に登上線維に取り込ませ、下オリーブ核細胞の細胞体まで運搬させる。同時に延髄細胞にCre依存的EGFP発現ベクターを注入しておくことにより、下オリーブ核細胞特異的に蛍光タンパクを発現させる。これらのベクターを作製し、試みた結果、プルキンエ細胞がtdTomatoで標識され、延髄細胞の一部がEGFPで標識された様子が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の目標として、小脳においてプルキンエ細胞あるいはグリア細胞特異的に蛍光タンパク遺伝子を導入する方法の確立と登上線維のみ、蛍光タンパク質を発現させる方法の確立を掲げていた。前者の確立はほぼ達成され、後者の目標も確立までの見通しができるまではきている。そのため、大きな方向転換無く、次年度に引き続き研究を続けることで、本申請の目標が達成できる可能性がある。これらの理由からおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 目的のシナプスを構成する細胞および線維を特異的に標識する方法の確立。:23年度に引き続き、登上線維、プルキンエ細胞特異的に蛍光タンパクを導入する方法の最適化を目指す。(2) 複数の細胞や線維を別々の色で区別して標識する方法の確立: (1)で確立した方法を用い、細胞や線維を別々の色で区別して標識するために、2つの方法を試みる。双方とも三原色の加法混色で様々な色を作るテレビモニターのように、3色の蛍光タンパク(例えば青:Cerulean, 緑:EYFP, 赤:tdTomato)の発現の組み合わせで様々な色に個々の細胞や線維、シナプスを標識する(Livetら、Nature 450: 56-62, 2007)。第一の方法は、3種類のCre依存的蛍光タンパク発現レンチウィルスベクターを混合し延髄細胞に導入することで、下オリーブ核細胞特異的に様々な色の蛍光タンパクが発現し、その結果登上線維のみが様々な色で標識される。第二の方法は、Livetらが作製したBrainbowベクターを改良し、用いる。Livetらが作製した構造との最大の違いは、蛍光タンパク遺伝子の上流に終止コドンを含む配列(STOP配列)を挿入していることである。このstop配列と供にlox511、lox2272、loxPを用いたベクターを作製することにより、3種類の蛍光タンパクがランダムにそれぞれの細胞で発現するようになる。これらの方法を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
各種ベクターの作製に必要な試薬とその効果を試す動物が主な研究費の使用用途となる。実験動物:妊娠ラット・マウス(培養に使用)8(千円/1匹)×4(匹/1ヶ月)×12=384千円、床敷5(千円/1ヶ月×12=60千円、餌10(千円/1ヶ月)×12=120千円; 合計約570千円/年試薬: 培養用試薬(MEM培地、血清、添加物等)60(千円/1ヶ月)×12=約720千円, 遺伝子工学関連試薬(プラスミド抽出、ポリメラーゼ等) 60(千円/1ヶ月)×12=720千円: 合計約1440千円/年培養用ディスポ器材 (培養皿, 培養フィルター、ディスポピペット等) 35 (千円/1ヶ月)×12=420千円/年混合ガス、炭酸ガス:8(千円/2ヶ月)×6=約48千円/年
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