幼若期の神経系には過剰なシナプスが存在し、これらは機能的に未熟な状態にあるが、生後発達に伴い必要なシナプスの強化と不必要な入力の弱化及び除去が起こり(シナプスの選択的強化・除去)、機能的に成熟した神経回路が形成される。本研究では、小脳登上線維-プルキンエ細胞シナプスの生後発達を対象とし、申請者が新たに開発した小脳・延髄のin vitro共培養系や生きた動物の脳内を直接観察する系において、発達期の小脳の中で登上線維がどのように刈り込まれるのかをリアルタイムで観察し、その細胞機構の解明を目指した。 平成24年度は、複数の細胞や線維を別々の色で標識し、観察する方法の確立と生きた動物内で登上線維を可視化する方法の確立を目指した。3種類の蛍光タンパク質とそれらを発現させるためのレンチウィルスベクターを用い、小脳・延髄の共培養標本へ蛍光タンパク質発現レンチウィルスベクターを注入した結果、複数の細胞が別々の色で標識され、複数の線維も別々の色で標識されていた。しかしながら、それらの線維が登上線維であるかどうかは良い登上線維マーカーがないため決定できなかった。そこで、生きたマウスで登上線維を観察する方法を試すために、生後直ぐのマウスの延髄にそれらの蛍光タンパク質発現ウィルスベクターを注入し、1週間以降経過した後に、観察した。その結果、小脳内において、蛍光タンパク質で標識された登上線維がその標的細胞であるプルキンエ細胞の細胞体や樹状突起上に観察された。今後、これらの方法を組み合わせ、生きたマウスの脳内において、リアルタイムイメージングを行うことで、シナプスの選択的強化や除去がどのように進行するのかが明らかになることが期待できる。
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