研究課題/領域番号 |
23650162
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
竹内 秀明 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00376534)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | メダカ / 近交系 / 行動特性 / QTL |
研究概要 |
申請者のグループは行動特性を規定する遺伝的背景を同定する目的で、人に慣れやすい性質を持つHdrR-II近交系メダカと臆病で人から逃げ回るHNI-II近交系メダカの外部刺激依存の反応様式を比較した。その結果、HNI-II近交系は視覚刺激に対して高頻度で逃避様反応を示すが、HdrR-II近交系はあまり反応を示さないことがわかった。このことから、両近交系は一個体レベルで視覚刺激に対する逃避様反応に違いがあり、この反応性の違いがHNI-II 近交系の臆病な行動形質を反映していると考えている。メダカでは遺伝子マーカーが十分に整備されており、近交系間による形質の違いを定量化できれば、形質差を生み出す遺伝子座の同定が可能である。そこで、2つの系統を交配してF2個体を約100個体作出し、各個体の行動検定を行い、研究連携者(成瀬准教授)と共同して全個体のジェノタイピングを行った結果、16番染色体に存在する遺伝子マーカー近傍に反応性の差異と極めて相関の高いゲノム領域があることが判明した。この領域の尤度の強さを示すLOD (logarithm of odds) 値は10であり、5%有意水準に対応する閾値5.3と比較して極めて高い。またHNI-II近交系は新潟由来の野生メダカから作出されたが、同じ北日本の石川県由来Kaga近交系はHdrR-IIに近い反応性を示した。さらにHNI-IIと同一の野生集団から作成されたHNI-I近交系もHdrR-IIに近い反応性を示した。よってHNI-II近交系の行動特性は地域固有の行動特性でなく、新潟野生メダカ集団内の遺伝的多型を反映している可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
QTL解析によって16番染色体の特定の遺伝子マーカー近傍に行動形質の差異と極めて相関の高いゲノム領域があることを示すことに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
HNI-IIとHdrR-II近交系はゲノムプロジェクトが終了しており、2系統間のゲノム配列を直接比較することで遺伝子多型を検索できる。本研究課題では染色体が系統間置換されたコンソミック系統を利用し、目的遺伝子が16番染色体に存在してエピスタシス等が存在するか確認する。同時にメダカコンジェニック系統を作製し目的ゲノム領域を絞り込む。最終的には目的ゲノム領域に対応するBAC, Cosmid, Plasmidクローンを遺伝子導入した個体の行動検定を行う事で、目的遺伝子を同定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
メダカコンジェニック系統の過程で必要なジェノタイピングのための遺伝子工学試薬。メダカ系統の維持費
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