研究課題/領域番号 |
23650164
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小田 洋一 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00144444)
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研究分担者 |
堀 道雄 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40112552)
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キーワード | 左右性行動 / シクリッド / 鱗食魚 / マウスナー細胞 / 発達 / 後脳 / cfos |
研究概要 |
本研究では,動物に広く認められる左右性行動の神経基盤を理解するために,アフリカ・タンガニンカ湖に生息するシクリッド(ミクロレピス)が示す鱗食行動の著しい左右性を対象にした.本年度は①鱗食行動の左右性の発達を解析し,さらに②左右性を発現するニューロンを特定する手法を確立した.①については,様々な発達段階の鱗食魚(稚魚期~若魚期~成魚)をタンガニイカ湖で採集して胃内容分析を行った.分析の結果,体長35mm以上の個体は専ら鱗を摂食していることを見出した.つぎに,シクリッドの側線鱗の形状を精査して,その左右差から由来する体側を判定する方法を確立した.この方法を用いて,鱗食シクリッドの胃に含まれる側線鱗の形状を計測して,シクリッドが被食魚のどちらの体側か襲撃したかという捕食行動の左右性を推定した.計測の結果,鱗を食べ始めた直後から口部形態に合った体側由来の鱗を主に摂食していたので,捕食行動の左右性は遺伝的な影響を受けていると示唆された.また,稚魚期から若魚期(40-70mm)では,口部形態とは逆体側の鱗を摂食していた個体も見られたが,体長の増加とともに口部形態と合う体側の鱗を摂食していた比率が有意に高まっていた.したがって,捕食の経験による学習で襲撃方向がさらに偏ると推定できる.②については,捕食行動に関わる後脳ニューロン群の活動および左右差を,初期応答遺伝子の発現検出から明らかにする手法を確立した.具体的には,同じ科に属するティラピアのゲノムデータベースをもとにして,鱗食シクリッドのM細胞を同定するためのChAT(コリン作動性ニューロンのマーカー)と,神経活動にしたがって発現するc-fosの計測を行うためのプローブを作成し,in situ hybridizationを行った結果,鱗食行動に伴って,一方のマウスナー細胞に強い発現が見られ,鱗食行動への寄与と左右差が示唆された.
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