研究課題/領域番号 |
23650166
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
木津川 尚史 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (10311193)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 連続運動 / リズム / マウス / ステップ |
研究概要 |
連続する運動の形成が脳でどのように行われているかを解明することを究極の目的にしている。当挑戦的萌芽研究では、連続運動時に活動する複数の脳部位(大脳皮質運動野、線条体)がどのような関係性になっているかを調べることを目的としている。 走行するマウスの脳から神経活動記録を行い、主として大脳皮質運動野、大脳基底核線条体から同時に複数の単一神経活動を記録した。その結果、どちらの脳部位も走行時の運足に関連する神経活動を示し、周期性が認められた。このことは、両部位が連続運動、とくにリズムに関連した情報をコードしている可能性を示唆している。また、両部位の活動は共に周期性をもっているものの、周期的運足への関連については異なる様相(部位特異的様相)を示していた。この違いに着目することにより、両部位の連続運動遂行における機能の違いを明らかにできると考えている。 また、両部位がお互いどのように影響し合っているかを解析するために、光刺激により脳内に直接外乱を与える準備を進めている。チャネルロドプシン2をエレクトロポレーションにより脳に発現させたマウスを作成して、実際に光刺激を行い、慢性電極から記録することに成功した。 さらに、走行中のマウスに光刺激を与える方法の開発を続けている。マウスはホイール内を走行する。回転するホイール内に光ファイバーを到達させるため、左右のホイール間にスリットを設けて、その間隙に光ファイバーを差し込めるようにホイールを改良した。また、マウスの頭部に光ファイバーを固定するためのマイクロドライブを設計するための予備実験を行ってきた。現在、特殊設計のマイクロドライブを発注しているところである。このマイクロドライブが完成したら、走行するマウスの脳に光を照射して刺激を加えながら、同時に神経活動を計測する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスの走行実験、神経活動の記録などの技術は順調に機能しており、それらを用いた実験により順調に結果が得られている。これにより、マウスの連続運動形成についての新しい知見が得られつつある。 また、遺伝子の導入に関しても順調な結果が得られている。 光刺激を脳内に導入するためには、光ファイバーをマウス頭部に固定するためのマイクロドライブの開発が必要である。そのための新規マイクロドライブは、現在アメリカの企業に依頼して制作中である。日本の企業でも予備的に制作してみたが、技術的には十分であるが、大量に作成しても1個作成しても同額(高額)であり、複数種類のドライブを作成して試行錯誤することが難しい。そのため、現在のところ想定よりも制作に時間がかかっているが、より高機能なものを作成できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
マウスの走行実験、神経活動記録はほぼ順調に進められており、新しい知見も得られてきているので、これをもとに複数の脳部位間の機能の違いを明らかにしていく。これと平行して、大脳皮質などにエレクトロポレーションによりチャネルロドプシン2を発現させたマウスを作成し、そのマウスを走行させながら脳内に光刺激を与える。光刺激を与えたときの脳の状態を、神経細胞発火とLFPの測定により解析する。この技術が確立したら、例えば大脳皮質を刺激して線条体の神経活動がどのような影響を被るか,などを解析する。走行中のマウスから直接測定することを想定しているが、もし技術的に困難である場合には、非走行時に光刺激を行い、異なる脳内部位の神経細胞間の相関にどのような影響がでるかを解析する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
マウスの走行実験、神経活動記録を進めるために、行動実験と電気生理実験用品を購入する予定である。マウスの維持費も必要であり、遺伝子操作のために分子生物学用試薬を使用する予定である。また、上記のように、新規なマイクロドライブを制作するための費用が必要である。
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