研究課題
本研究は、「神経細胞がいかにして過剰な軸索形成を抑制するのか」という点に絞って、脳内における神経極性の成立と維持の分子機構の解明を目指す。本研究では、培養神経細胞の過剰軸索形成を抑制するSingar1のノックアウトマウス脳内における神経細胞の形態異常を解析する。また、Singar1の機能の分子メカニズムの解明のために、Singar1と直接相互作用するRab33aの機能を解析する。前年度は、Rab33aの機能を解析し、Rab33aが、細胞体で新たに合成された細胞膜成分を軸索先端へ輸送し細胞膜に供給することによって、軸索の形成と伸長を引き起こすことを示した。本年度は、Singarのノックアウトマウス脳内における神経細胞の形態異常を解析した。興味深いことに、Singarのノックアウトマウスは、生後、1日ほどで死亡する。そこで、生後、1日目の脳をニッスル染色で調べたところ、マクロの脳構造や神経核の構造に目立った異常は認められなかった。そこで脳のバレル構造の解析に適したCO染色で解析した。バレル構造は、げっ歯類のヒゲからの体性感覚を情報処理する機能モジュールであり、細胞体と樹状突起が整然した特徴ある構造を構築する。興味深いことに、Singar1のノックアウトマウスでは、脳幹のバレル構造に該当するBarrelettesの形成が認められなかった。以上の結果から、Singar1は脳内における樹状突起の配列や、神経細胞の配列形成に重要な役割を果たす可能性が示唆された。
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Journal of Neuroscience
巻: 32 ページ: 12712-12725
10.1523/JNEUROSCI.0989-12.2012
http://nippon.naist.jp/inagaki_g/