研究課題/領域番号 |
23650169
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
持田 澄子 東京医科大学, 医学部, 教授 (30096341)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | シナプス / ミトコンドリア / 軸索輸送 / 蛋白 / イメ-ジング |
研究概要 |
シナプス活動に依存した「蛋白群の合成 → 軸索輸送 →シナプス前終末での機能蛋白複合体構築」におけるミトコンドリアの軸索内およびシナプスボタンへの配置とエネルギー供給を解析するために、ミトコンドリアを軸索の適所に配置する蛋白群のDNA をmicroinjectionしてミュータント蛋白や蛋白相互作用機能ドメインを強制発現させて機能を阻害したひとつのシナプス前細胞、そしてsiRNAを導入してそれらの蛋白発現を阻害したひとつのシナプス前細胞で、異色蛍光蛋白でラベルしたシナプス機能の異なる複数の蛋白質の同時ライブイメージングを行ない、様々な刺激パタ-ンに応じた神経活動による蛍光ラベル蛋白(3-4種類)の動態をリアルタイム、あるいは経時的に追跡観察することによって、神経活動に依存したミトコンドリア移動、エネルギー供給、それにともなうシナプス前終末蛋白輸送形態を明らかにする計画であったが、23年度に実施した研究実績は、以下のとおりである。幼若ラット(生後7日)の上頸交感神経節細胞を単離し、神経成長因子存在下で数週間培養して神経細胞間にシナプスを形成し、発育途上(培養3週)と成熟シナプス(培養6週)を形成した神経のミトコンドリアをGFP可視化して、様々な刺激パタ-ン与えたときの動態を観察した。さらに、神経軸索をシナプス前終末に輸送され、シナプス前終末で機能する蛋白として、SNARE蛋白質syntaxinをGFP可視化、シナプス小胞膜蛋白質のsynaptophysinをRFP可視化、また、active zone 蛋白質のCASTをGFP可視化して、様々な神経刺激パタ-ンに応じた神経軸索の移動を観察し、神経軸索での蛍光の分布強度、移動速度、シナプスへの蓄積を指標として解析を始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の23年度の実施計画では、(1) Ca2+を感受するMiro、 (2) KIFモーター分子のCaMKII燐酸化サイト、(3) Syntaphilinとその結合分子dyneinの遺伝子導入によって過剰発現、ミュータント遺伝子導入によって機能阻害、あるいは、siRNA導入によってノックダウンさせた神経細胞でSNARE蛋白質、active zone 蛋白質、シナプス小胞蛋白質、endocytosis蛋白質、シナプス小胞貯蔵蛋白質のシナプスへの輸送に及ぼす様々な神経活動に伴う影響を遺伝子導入した神経細胞で複数機能蛋白のライブイメージングで解析して、神経活動による細胞内Ca2+上昇→ミトコンドリア輸送→ミトコンドリアの配置→ミトコンドリアからのエネルギー供給がシナプス構築を制御することを明らかにする予定であったが、(研究補助金の振込が遅れたため)3-4種類の蛍光を同時に測定できる装置の納入が2月であったので、ミトコンドリア、SNARE蛋白質 (syntaxin)、シナプス小胞蛋白質(synaptophysin)、active zone 蛋白質(CAST)の神経活動に伴う神経軸索での動態を蛍光ラベル蛋白群同時測定ではなく、単独に観測するに留まった。さらに、電気生理学実験と組み合わせたタンパク質イメージング研究は、震災後節電を強いられた状況の影響もあり、現在までの課題達成度は満足できるものではない。
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今後の研究の推進方策 |
Ca2+、ATPのシナプス前細胞への注入、さらにCaged-Ca2+、Caged-ATPを使って局所的にCa2+、ATP濃度を上昇させ、(1) Ca2+を感受するMiro、 (2) KIFモーター分子のCaMKII燐酸化サイト、(3) Syntaphilin とそのモーター分子dyneinの機能阻害、あるいは、ノックダウンさせた神経細胞で SNARE蛋白質、active zone 蛋白質、シナプス小胞蛋白質、endocytosis蛋白質、シナプス小胞貯蔵蛋白質のシナプスへの輸送に及ぼす影響を遺伝子導入した神経細胞で複数機能蛋白の同時ライブイメージングで解析して、レスキューする実験を試み、細胞内Ca2+上昇→ミトコンドリア輸送→ミトコンドリアの配置→ミトコンドリアからのエネルギー供給がシナプス構築を制御することを確認するという当初の24年度の実施計画を変更して、様々な神経活動に伴う影響を遺伝子導入した神経細胞で複数機能蛋白のライブイメージングで解析して、神経活動による細胞内Ca2+上昇→ミトコンドリア輸送→ミトコンドリアの配置→ミトコンドリアからのエネルギー供給がシナプス構築を制御することを明らかにするという23年度の計画目標を確実に達成することとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を実施するために、一次培養神経細胞を毎週作成し、6~7週間維持する。生後7日の子ラットから交感神経節神経細胞を採取するため、交配用の親ラットを定期的に購入する(\30,000)。採取した神経細胞の培養溶液に加えて細胞を維持するための神経成長因子(Alomone Labs: 575 $x3本)、培養細胞用プラスチックディッシュ(\50,000)を購入する。培養神経細胞を用いる研究として、神経終末蛋白シナプトフィジンを蛍光可視化するための試薬 (Invitrogen: $339) 、ミトコンドリアを蛍光可視化するための試薬(Evrogen: \84,000)を購入する。また、収得した実験データを解析するパーソナルコンピュータ(エプソン:\100,000)を購入する。さらに、得られた実験結果を論文にまとめて発表するための投稿費と掲載費を研究費から使用する(\100,000)。
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