研究課題/領域番号 |
23650170
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
浜 千尋 京都産業大学, 総合生命科学部, 教授 (50238052)
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研究分担者 |
中山 実 京都産業大学, 総合生命科学部, 助教 (40449236)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | シナプス / hikaru genki / srpx2 / 行動 / 神経 / ショウジョウバエ / てんかん / 病気 |
研究概要 |
近年、家系解析により、ローランド型てんかんの原因遺伝子のひとつとして分泌性タンパク質をコードするsrpx2が同定された。この遺伝子は、ローランド裂を含む脳領域では神経細胞特異的に発現しているが、その異常がもたらす疾患の発症機構は不明である。そこで本研究では、ローランド型てんかんの発症機構解明に向けて、遺伝学的解析が容易なショウジョウバエを研究材料に用い、まずその神経系にヒトの野生型および変異型srpx2遺伝子を導入して誘導的に発現させることが可能な系統を確立し、その上でSRPX2の機能解析を可能とするモデル実験システムの構築を目的とした。そのために,以下の2点について解析を行った。1.野生型および変異型srpx2 遺伝子を発現するショウジョウバエ形質転換体の作成とその性質の解析(浜)。ヒトsrpx2 遺伝子をショウジョウバエで発現させるために、酵母のGal4/UAS 発現系を利用した。まず、野生型と2種の変異型srpx2 cDNA をそれぞれUAS 配列に接続する形でショウジョウバエのP因子形質転換用ベクターに組み入れ、得られたプラスミドDNA をショウジョウバエの胚に注入して生殖系列形質転換体の作製を試みた。その結果,それぞれについて複数の形質転換体を得ることに成功した。2.SRPX2 とHig の機能における関連性の解析(中山)。hig 変異株が示す活動性低下は、hig 遺伝子を蛹の中期に一過的に発現させることで回復させることができる。そこで、同様にhigと類似したsrpx2 遺伝子をhig 変異株で発現させることによりその表現型を回復させることができるか調べた。今回は発現ドライバーとしてelav-Gal4を用いたが,srpx2はhig変異の致死率および活動性を回復させることができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
23年度の計画のうち,第一の計画については予定通り,野生型および2種の変異型のsrpx2遺伝子の形質転換体を複数作製することができた。しかし,第二の計画においては,いずれの形質転換体についてもhig変異の表現型を野生型に回復させることはできなかった。また,ヒトのsrpx2遺伝子の変異は優性変異として,てんかんを引き起こすことから,その変異をもつsrpx2遺伝子をショウジョウバエで発現させることで,てんかん様の症状あるいは行動異常がもたらされることを期待したが,そのような現象を観察することはできなかった。その原因として,それぞれの形質転換遺伝子の発現量,higとsrpx2遺伝子の機能的関連性,SRPX2タンパク質のシナプスにおける局在などを挙げることができる。
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今後の研究の推進方策 |
ヒトSRPX2タンパク質を発現するショウジョウバエの形質転換体の性質をさらに解析していく。まず,SRPX2タンパク質をウエスタンブロットにより,あるいはsrpx2 mRNAを定量PCRによりそれぞれの発現量を調べる。次に形質転換体におけるsrpx2遺伝子および発現ドライバーのコピー数を増やすことにより,当該遺伝子の発現量を増加させることを試みる。その上で,hig変異株の表現型を野生型に回復させることができるか,あるいは行動に異常がもたらされるか,解析を加えていく。さらには,野生型および変異型のsrpx2遺伝子をショウジョウバエの眼で発現させ,そこでの形態的異常の有無を調べる。複眼は800個の個眼からなり,その構成細胞が死んだり異常になると、複眼全体が縮小したり表面が粗くなるため,srpx2遺伝子の発現による異常を比較的容易に検出することができる。ここで,srpx2遺伝子の強制発現により眼に異常が観察された場合には,srpx2と遺伝的な相互作用を示す遺伝子を同定するために,眼の形態異常が昂進あるいは軽減する修飾変異を分離し,その責任遺伝子を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ショウジョウバエの維持に必要な餌代に30万円,アルバイト代に10万円,学会旅費等に20万円,分子生物学および免疫組織化学的実験用の試薬に30万円を必要とする。
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