研究課題/領域番号 |
23650173
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研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
政井 一郎 沖縄科学技術大学院大学, 神経発生ユニット, 准教授 (50242087)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 視細胞変性 / 小胞輸送 / ゼブラフィッシュ / BH3蛋白質 / 細胞死 / アポトーシス |
研究概要 |
ヒトにおける視細胞変性の遺伝病のモデルとして、ゼブラフィッシュの視細胞変性を示す突然変異体を同定し、そのひとつであるcorona (coa)変異体の解析を行った。coa変異体は小胞輸送を制御するbeta-SNAPに変異が起きていることから、小胞輸送の異常が細胞死を引き起こすメカニズムを研究するよいモデルになっている。ミトコンドリアを経由する細胞死は、Baxによって活性化し、Bcl2によって抑制される。また、多くのBH3蛋白質がBaxとBcl2のバランスを制御することで、細胞死を誘導する。今年度は、coa変異体での視細胞死はBaxの抑制もしくはBcl2の活性化で、抑制できることを明らかにした。このことはcoa変異体ではミトコンドリア依存的な細胞死経路で視細胞が変性することを示している。さらに、どのBH3蛋白質が関与するか調べた結果、ひとつ有望な候補を絞り込むことができた。さらに組織学的なアプローチとして、coa変異体での視細胞変性過程を電子顕微鏡で観察することで、ゴルジ体の消失、光受容膜の縮小が、変性初期に起きることを発見した。このことから、小胞輸送が、細胞内膜系の維持に極めて重要であることが明らかになった。次に、上記のメカニズムとヒト視細胞変性の遺伝病との関連を探索する目的で、ヒトにおいて視細胞変性を示すロドプシン変異の中から、輸送が異常になるものを選抜し、その変異ロドプシンを発現させたゼブラフィッシュのトランスジェニック系統を作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は予定通り、coa変異体での視細胞死を誘導する可能性のあるBH3蛋白質を絞り込めた。また、視細胞の変性過程についても、電子顕微鏡レベルでの解析も完了し、ゴルジ体や光受容膜の消失を伴うことを明らかにし、小胞輸送の異常が引き起こすステップの一端を明らかに出来た。また、輸送異常を示す変異ロドプシンを発現するゼブラフィッシュトランスジェニック系統の作製も完了しており、上記のBH3蛋白質の関連を調べることが可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、絞り込んだBH3蛋白質について詳細な機能解析を行い、coa変異体における視細胞変性の分子メカニズムを明らかにして行く。また、ロドプシン変異のトランスジェニック系統を用いて、上記の分子メカニズムとの関連も調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究に必要な消耗品の購入と、ゼブラフィッシュの系統の維持と実験サポートのパート雇用の人件費を、昨年度からの繰り越し分を含めて、必要額として計上している。
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