24時間周期の概日リズムは、ほとんどすべての生物に備わる基本的生命現象で、遺伝子と行動(脳機能)の関係を明らかにする上で非常に優れた系である。リズムの中枢は脳内視交叉上核(SCN)である事がわかっているが、SCNに特異的に発現する遺伝子・プロモーターは知られておらず、理想的な発生工学的手法は利用できない現況である。本研究は、SCNに強く発現する遺伝子群のプロモーターを複数利用し、Cre-loxP及びTet-on-off系を組み合わせる事により、あらたなリズム中枢(SCN)特異的遺伝子発現系を構築し、さまざまな遺伝子改変マウスの開発の基盤を作ろうとするものである。 SCNに強く発現するAVP遺伝子のプロモーターを利用したCreマウスと研究代表者らが発見した新規時計遺伝子であるChono(ChIP-derived repressor of network oscillator)のfloxマウスを交配することで、SCN特異的にChronoの発現をなくす、Chronoのコンディショナルノックアウトマウス(CKO)を作製した。本マウスの概日行動リズムを測定したところ、恒常暗条件下で、概日行動リズム周期の延長を示した(野生型は平均23.83時間、Chrono CKOは24.00時間)。 これらの結果は、Chronoがコアの時計遺伝子として働いていることを示唆している。また、本研究に用いたAvp-CreマウスはSCN特異的Creマウスとして有効である。
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