研究概要 |
凍結割断レプリカ免疫電顕で検出できる遺伝子導入マーカーコンストラクトの候補として、平成23年度にpCAGGS-Venus-VAMP2, pCAGGS-Venus-VGlut1, pCAGGS-Venus-VGlut2について解析した。これらを子宮内エレクトロポレーション法により大脳皮質II/III層の錐体ニューロンに導入し、大脳皮質V層の錐体ニューロンに投射するシナプス前終末でこれらのシグナルが集積することを確認した。遺伝子導入マウスをPFAで還流固定し、遺伝子導入部位の組織片を切りだし、高圧下で急速凍結・割断し、カーボン蒸着、SDS処理により細胞質成分を除去し、SDS-FRL標本を作成した。ポリエチレングリコールとレチナールを含む溶液でSDSを含むレプリカ標本溶液を段階的に置換して蛍光タンパク質をリフォールディングし、蛍光シグナルの検出に成功した。平成24年度は、膜結合型蛍光タンパク質の発現コンストラクトpCAGGS-EGFP-H-rasおよびpCAGGS-myr-mCherryについても同様の手法でSDS処理後のリフォールディングに成功し、抗GFP抗体を用いて電子顕微鏡下でEGFPのシグナルの検出にも成功した。 凍結割断レプリカ免疫電顕法は、シナプス表面タンパク質を可視化する方法として極めて有用であるが、これまで遺伝子導入と組み合わせることができなかった。今回の研究で、遺伝子導入した膜融合蛍光タンパク質を、SDS処理をした後にリフォールディングさせることにより、導入ニューロンを識別する技術が確立できた。これにより、今後シナプス分子のshRNAやfloxマウスに対するCre組換え酵素などを導入することにより、これらの分子が膜タンパク質のシナプス表面での動態に及ぼす効果を効率よく解析できることが期待できる点で、重要な意義を持つ。
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