研究概要 |
遺伝性血管性認知症CADASILはNotch3遺伝子変異が原因遺伝子として同定され,その遺伝子産物Notch3は血管平滑筋特異的に発現する.申請者らの研究でCADASIL患者の脳血管には重度の壁肥厚や周囲腔拡大が観察されることが判明し(Stroke 2009),その病態解明には血管の病態生理の研究が欠かせなし.そこで本研究課題では,CADASILの疾患特異的iPS細胞から誘導する血管平滑筋細胞を用いて試験管内において病態をモデル化し,さらにCADASILのモデル動物(変異型Notch3過剩発現マウス)を用いて病因の形成機序や病態の進行メカニズムを明らかにすることを目的とする. Notch3の変異部位が異なる3名のCADASIL患者のヒト皮膚線維芽細胞を採取した.1患者において,その線維芽細胞を100mm培養皿で培養し,それにレンチウイルスを含有した培地を入れることによりマウスエコトロピックレセプターSlc7a1を導入した.更に,このエコトロピックレセプターを介して感染するレトロウイルスを含有した培地を入れることにより4つの初期化因子(Oct3/4, Sox2, Klf4, c-Myc)を線維芽細胞に導入した.レトロウイルス感染後6日目に,感染済み線維芽細胞をSNLフィーダー細胞でコーティングされた100mm培養皿に播種し約2週間後に出現してきたiPS細胞コロニーをピックアップし,新たに調製したSNLフィーダー細胞上に播種する.更に拡大培養を行い,十分な細胞数になったものを品質確認した後に,iPS細胞として使用した. CADASIL患者のiPS細胞から誘導した血管内皮・平滑筋細胞を用いて,表現解析を行い,健常者から誘導された血管内皮・平滑筋細胞との比較を行い,CADASILの病態機序をin vitroで検討した.さらに,新規入手したNotch3トランスジェニックマウスを用いて,in vitroの系で確認した表現型をモデル動物にて確認を行うことで,CADASILの病態解析を試みた.
|