研究課題
アルツハイマー病(AD)の早期診断法の確立が待ち望まれているが、AD病理変化に伴うバイオマーカーの探索は困難な局面に達している。その原因は、AD発症よりも数十年早い段階で病理変化が進行していることが原因の一つだと考えられる。最近我々は、Aβ43が加齢に依存して、かつAD病理形成に先行して脳内で増加していることを見出した。本研究は、Aβ43をAD早期診断マーカーの新規候補として捉え、 Aβ43の高感度検出法を構築し、AD患者と健常人もしくは、ADモデルマウスのサンプル中のAβ43レベルと病理との相関を詳細に解析することでAD早期診断法としての有用性を見出すことを目的とする。 本研究計画を完遂する上で最も重要となるのが、Aβ43の検出システム(ELISA法)の高感度化である。そのためには、選択的にAβ43を認識できる抗体が必須であるが、現在までに特異性が高い抗体を見いだす事に成功している。しかし、抗体の感度についてさらに向上させる必要があると考えており、現在抗体を作製中である。 一方、ELISAシステムにおいて一般的なホースラディッシュパーオキシダーゼ(HRP)を用いた吸光による検出システムよりも、蛍光基質を用いた方法により、5~10倍程感度を増強することに成功した。 今後は、高感度Aβ43抗体の選出を終了させ、モデル動物および、AD患者の脳脊髄液や血漿を用いた解析を行い、AD早期診断法への応用へ展開していく予定である。
2: おおむね順調に進展している
現在までの最大の目的は、ELISAによる測定・検出感度の増強であり、すでに5~10倍程度の感度増強に成功した。ただし、Aβ43特異的かつ高感度の抗体が得られることにより、さらなる感度上昇が見込まれるため、その抗体が得られるか否かを見極める必要がある。
今後は、まず高感度かつ特異的なAβ43に対する抗体を選出する事を第一目的とする。しかし、抗体の選出に時間を取られる過ぎるのは、最終目的の達成に支障を来す可能性がある。そこで、現状の感度で生体サンプル(モデル動物およびAD患者由来のサンプル)からのAβ43の検出が可能か否かの判定も併せて解析を開始する。そのためには、モデル動物の病理との相関性を得る必要もある。最終的に、我々が保有している、AD患者由来のサンプルと健常人由来のサンプルで差を見いだす事ができれば、さらに臨床サンプルを増やしていく予定である。
Aβ43に対する抗体を選出し、高感度ELISA法に適合出来るか否かについての生化学的解析を行う。さらに、生体サンプルを用いた生化学的解析の結果と、それに対応するモデル動物などの病理結果との整合性を取るために免疫組織化学的な解析を行う。 一方、本方法が確立した後に、臨床サンプルを増やすことも視野に入れているが、そのために学会発表を行いアピールすることも必要である。また、研究打ち合わせ旅費が、発生する可能性もある。
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Nature Neuroscience
巻: 14 ページ: 1023-1032