研究課題
統合失調症患者における脳画像解析および剖検脳を用いた遺伝子発現解析、遺伝学的解析等より、統合失調症の病態とオリゴデンドロサイト/ミエリン障害との関連性が示唆されている。そこで本研究では、オリゴデンドロサイトの前駆細胞として知られるオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPCs)に着目して、マウスにおける統合失調症様行動異常とオリゴ新生との関連性について検討した。まず、孤発性の統合失調症モデル動物としてFabp7ノックアウト(KO)マウスを用い、統合失調症の病態におけるオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPCs)の関与について検討した。8週齢のマウス海馬において、PDGFRa陽性のOPCsは海馬に一様に存在し、そのほとんどがFabp7を発現していた。Fabp7KOマウスにおいて、海馬歯状回の顆粒細胞下層に存在する神経幹細胞の増殖はFabp7の欠損によって低下していたが、OPCsの増殖には有意な変化は認められなかった。次に、Fabp7 KOマウスと同様に、統合失調症様行動異常としてプレパルス抑制(PPI)の低下を認める自然発症Pax6変異マウスに関してOPCsの解析を行った。野生型マウスでは海馬OPCsのうち約7%程度にPax6が発現しており、Pax6陽性のOPCsは増殖能が高い集団であることが明らかとなった。C57BL/6J系統のPax6ヘテロ変異マウスではOPCsの増殖が低下していたが、ICR(CD1)系統のPax6ヘテロ変異マウスではPax6陽性のOPCsの増殖は野生型と同等であった。4週齢のC57BL/6J系統Pax6ヘテロ変異マウスでは脳梁におけるミエリン塩基性タンパク質の染色性が減少する傾向にあった。これらの結果から、Pax6は脳の発達期においてOPCsの増殖を制御し、神経線維のミエリン化を促進している可能性が示唆された。
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