研究課題
申請者が樹立したミクログリア細胞株が低レベルながらHoxb8を発現していることが確認できたため、本年度はうつ病モデルマウスの脳にミクログリア細胞株を注入する実験を行った。マウスうつ病モデルは強制水泳法で行い、強制水泳処理後1日目と2日目の不動時間(秒)を測定しその変化によりストレス脆弱性(2日目の無動時間/1日目の無動時間)を計測した。実験はミクログリア細胞1x10^6個を線条体に投与し、投与8日と7日前および7日と8日後にマウスの強制水泳後の無動時間について測定した。その結果、ミクログリア投与により①強制水泳後の無動時間が約1/3に短縮された②強制水泳後2日目の無動時間の変化が抑制された③ストレス脆弱性が改善された(スコア3.2から1.4、p=0.16)。一方、注入したミクログリアはほぼ注入した線条体に集積して確認され、その一部の細胞にHoxb8タンパク質が免疫染色により確認できた。ミクログリアを注入しなかった強制水泳マウスの線条体にはHoxb8陽性細胞はほとんど検出できなかった。このとき、線条体神経細胞のArc-dVenus発現量に関してはその発現量が非常に低く、変化が確認できなかった。以上の結果から、ミクログリアはうつ病の発症に関係するストレス脆弱性の調節システムに関与し精神機能の発現に寄与している可能性が考えられた。今回使用したミクログリア細胞株はiNOSの発現や神経栄養因子発現のプロファイルに差があるため、ミクログリアのサブタイプの違いを反映していると考えているが、両者ともHoxb8遺伝子を発現しているため、2010に報告されたHoxb8遺伝子ノックアウトでみられる精神機能障害に関与するサブタイプに属すると考えられる。今後、Hoxb8を発現しないミクログリアとの役割の違いを明らかにする必要がある。
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PLOS ONE
巻: 8(2) ページ: e57046
10.1371/journal.pone.0057046
Cell Medicine
巻: 3(1-3) ページ: 43-49