研究課題
これまでにピロカルピン処理条件を変えることで、マウスに可逆的および不可逆的に不安様行動を発症させることができることを明らかにしてきた。不安様行動の発症や消失に伴い、脳内にどのような変化が生じているかを明らかにするため、てんかん重積後様々な日数の海馬のタンパク質量をイムノブロット解析で調べた。脳内変化をWBおよび組織化学で詳細に調べた。グルタミン酸レセプターを始めとする多くのタンパク質の量はてんかん重積後減少したが、調べたタンパク質の中ではGFAPとBDNFのみが増大していた。BDNFの量は不安様行動が見られなくなったマウスでも高いままであったが、BDNFの量は不安様行動を示す時期のみに高いことが明らかとなった。 不安様行動の発現にBDNFが関与する可能性が得られたので、BDNFの脳内発現を免疫組織化学によって調べるために不可欠な抗BDNF抗体の作成を行った。その結果proBDNF、matureBDNF、panBDNFに対するモノクローナル抗体の作成に成功した。 ピロカルピン投与によって引き起こされる不安様行動の発現が不可逆的になるのが、自発的なてんかん発作が起こるためであるのか否かを明らかにするため、シリンジポンプを用いた抗てんかん薬の連続投与法の開発を行った。これまでのところ、フェノバルビタールを連続投与しても不安様構造の出現には変化が見られなかったので、現在ビデオ解析で発作が抑えられているかの確認を進めている。
2: おおむね順調に進展している
可逆的および不可逆的に不安様行動を示すピロカルピンマウスを用い、不安様行動の発現に伴って変動する脳内タンパク質をスクリーニングした結果、候補タンパク質としてBDNFを見出すことに成功した。BDNFの発現が不安様行動の発症に関わるかを明らかにするためには、BDNFの発現変化が見られる脳内部位を特定することが必要であるが、そのために不可欠な各種BDNFに特異的なモノクローナル抗体の作成にも成功した。さらに不可逆的に不安様行動が出現するのは、(1)不可逆的な脳内変化が起こっている、あるいは(2)自発的なてんかん発作が繰り返され、その都度不安様行動が出現するため不可逆的に見える、という二つの可能性が考えられる。この二つの可能性のどちらが妥当であるかを明らかにするには、自発発作を長期にわたって抑制する必要がある。このために不可欠な抗てんかん薬の連続投与装置の作成も行い、実験を開始することができた。
不可逆的不安様行動の発現が、脳内構造やタンパク質発現の不可逆的変化によるものか、自発てんかん発作の多発によるものであるかを明らかにするため、抗てんかん薬の長期的な連続投与を行う。可逆的および不可逆的不安様行動の発症に伴う脳内変化をさらに明らかにするため、海馬や前頭皮質、扁桃体のプロテオミクス解析を行う。 BDNFの発現が不安様行動の発症に関わるかを明らかにするため、23年度に作成したこうBDNFモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学を行う。またBDNFのKOマウスやp75KOマウスにピロカルピンを投与し、不安様行動が発症するかを調べる。 不安様行動の発症がストレス系にどのような影響を及ぼすかを明らかにするため、不可逆的不安様行動を発症させたマウスに、冷水拘束ストレス、テープ拘束ストレス、社会性ストレスなどを加え、脳内各部位のCRF量や血中ACTHおよびコルチコステロン濃度の変化を市販のELISAキットを用いて測定する。またデキサメサゾン抑制試験を行い、フィードバック制御系の変化を調べる。 不可逆的不安様行動を発症させたマウスに、様々な抗不安薬、抗うつ薬などを投与し、不安様行動の消失が見られるかを調べる。硬化の見られた薬物については脳内構造やタンパク質発現にどのような影響が現れているかを調べる。
マウスの購入や飼育費。タンパク質発現変化探索のための抗体購入費。免疫組織化学関連試薬の購入費。コルチコステロン定量キットの購入費。PCR解析のためのプライマー購入費。各種抗不安薬、抗てんかん薬の購入費。神経化学会大会での発表のための旅費、宿泊費。論文英文校閲費。その他。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件)
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