研究課題/領域番号 |
23650195
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
柳 茂 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (60252003)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 神経変性疾患 |
研究概要 |
新規の膜型ユビキチンリガーゼMITOLはミトコンドリアに局在するユニークなユビキチンリガーゼであり、ミトコンドリアにおける機能が注目されている。私たちはMITOLがミトコンドリアの分裂因子であるDRP1を基質にすることにより、ミトコンドリアの融合と分裂を制御することを報告した(EMBO J. 2006)。その後、MITOLがミトコンドリアにおいて、変性タンパク質を分解することを見出し、MITOLがミトコンドリアの品質管理機構に関与していることを発表した(Mol. Biol. Cell 2009, Mitochondrion 2010)。このようにMITOLはミトコンドリアの機能発現と細胞の生存においてきわめて重要な酵素であるが、その分子メカニズムはいまだ不明な点が多い。今回、MITOLの本質的な役割が他にもあるのではないかと考え、酵母ツーハイブリッド法を用いてMITOLの生理的基質を探索した結果、微小管関連タンパク質MAP1B-light chain1 (LC1)を同定することに成功した(PNAS 2012)。LC1は神経細胞に豊富に存在し、その蓄積によって神経細胞毒性を引き起こし、さまざまな神経疾患の原因となっている。LC1は活性酸素種である一酸化窒素(NO)によってS-ニトロシル化されて機能することが報告されている。私たちは、MITOLが一酸化窒素によってS-ニトロ化されたLC1を特異的に認識し、ユビキチン・プロテアソーム経路を介して分解を促進することにより、LC1の過剰蓄積によるミトコンドリア機能不全を防御していることを見出し、ミトコンドリアによる新しい酸化ストレスに防御機構の存在を示唆した(PNAS 2012)。MITOLが酸化ストレスによる神経変性疾患の病態とどのように関連するかについては来年度の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MITOLが一酸化窒素によってS-ニトロ化されたLC1を特異的に認識し、ユビキチン・プロテアソーム経路を介して分解を促進することにより、LC1の過剰蓄積によるミトコンドリア機能不全を防御していることを明らかにし、論文として公表することが出来た(PNAS 2012)。
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今後の研究の推進方策 |
MITOLによるLC1の分解機構の破綻が、酸化ストレスによる神経変性疾患の病態にどのように関連しているかを明らかにする。とくに酸化ストレスに対する脆弱性が関与するパーキンソン病との関連性について細胞レベルおよび個体レベルの両面から検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
MITOLの生理機能解明のための、細胞生物学的解析と固体レベル(遺伝子改変マウス)での解析に必要となる消耗品に使用する予定である。
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