研究概要 |
新規の膜型ユビキチンリガーゼMITOLはミトコンドリアに局在するユニークなユビキチンリガーゼであり、ミトコンドリアにおける機能が注目されている。私たちはMITOLがミトコンドリアの分裂因子であるDRP1を基質にすることにより、ミトコンドリアの融合と分裂を制御することを報告した(EMBO J. 2006)。その後、MITOLがミトコンドリアにおいて、変性タンパク質を分解することを見出し、MITOLがミトコンドリアの品質管理機構に関与していることを発表した(Mol. Biol. Cell 2009, Mitochondrion 2010)。さらに昨年、MITOLの生理的基質を探索した結果、微小管関連タンパク質MAP1B-light chain1 (LC1)を同定することに成功した(PNAS 2012)。MITOLが神経細胞において一酸化窒素によってS-ニトロ化されたLC1を特異的に認識し、ユビキチン・プロテアソーム経路を介して分解を促進することにより、LC1の過剰蓄積によるミトコンドリア機能不全を防御していることを見出し、ミトコンドリアによる新しい酸化ストレスに防御機構の存在を示唆した。今回、生体内(脳内)においてMITOLが酸化ストレスの防御機構に関与しているかどうかを明らかにするために大脳皮質・海馬特異的MITOL欠損マウスの樹立に成功した。半年後においても今のところマウスは生存しており、致死ではないことが明らかとなった。今後、神経細胞死のなどの病理所見の有無について解析を行う予定である。
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