研究課題/領域番号 |
23650197
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
中村 秀樹 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (50435666)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 神経可塑性 / ケミカルバイオロジー |
研究概要 |
神経細胞後シナプスのスパイン特異的なタンパク質の発現を可能にするため、後シナプスのマーカータンパク質でもある足場タンパク質PSD-95をベースとしたDNAコンストラクトの作成を終了した。具体的には、PSD-95に、ラパマイシン結合ペプチドであるFRBと、ペプチド局在の可視化のための蛍光タンパク質を融合させたコンストラクトのデザインを考えた。局在およびラパマイシンによる標的タンパク質のスパイン移行の効率を可能な限り改善するため、これらのペプチドの順番を入れ替えたもの、FRBをタンデムにふたつ繋げたもの、また蛍光タンパク質のスペクトルを変えたものなど、計15種類以上のコンストラクトをすでに作成済みである。実際に使用する実験系として、マウス海馬の初代培養を選択し、実験条件を検討して手法を確立した。遺伝子導入の手法として、数種類の遺伝子導入試薬とエレクトロポレーションを検討したが、さらに効率的な手法を求めて現在も検討中である。蛍光タグ付きのPSD-95を用いて、PSD-95の後シナプス特異的な発現を確認した。現在上述したPSD-95の改変コンストラクトをひとつひとつ発現させ、その局在を確認している段階である。共同研究者から、細胞質からスパインに移行させるRho GTPaseファミリー関連ペプチドのコンストラクトを入手した。また、これらのペプチドのラパマイシン添加によるダイナミクスの変化を定量的に測定するために、FCSとFRAPを用いてこれらのペプチドの拡散係数を定量化する系を構築中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PSD-95を基にしたコンストラクトの作成は終了しており、移行するペプチドであるRho GTPaseのコンストラクトも共同研究先から入手済みである。現在は作成したペプチドの局在と、ラパマイシン添加による局在の変化を検出、解析する段階にある。ラパマイシンによるペプチド移行の実験系のスペシャリストである共同研究先との提携により、この実験系の具体的なノウハウを入手できたことも今後の研究の上で大きなアドバンテージとなると考えられる。ケージドラパマイシンの開発はやや遅れているが、以上の状況を考えるとおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
作成したPSD-95のコンストラクト、およびRho-GTPaseの関連ペプチドのコンストラクトを用いて、神経細胞の後シナプス特異的なRho GTPaseの活性化を実現する。蛍光イメージングによって、標的ペプチドのスパインへの移行、およびスパインの形態変化を検証する。また、パッチクランプ法によって興奮性後シナプス電流を測定し、Rho GTPaseの活性が神経シナプス結合に与える影響を定量的に解析する。ラパマイシンの16位の位置に光感受性の基を導入することにより、新規ケージドラパマイシンを開発する。単一シナプス近傍においてケージドラパマイシンをアンケージして、光によって単一シナプスを制御する系を実現する。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在使用可能な環境にある共焦点顕微鏡、または二光子励起顕微鏡に、紫外または赤外レーザーを局所的に照射する実験系を構築する。必要な部品の作成、購入に使用する。また、細胞培養や遺伝子導入、蛍光イメージングに必要な消耗品の購入には、引き続き相当分を充てる。次年度には研究成果の発表の為にも一部を充てる予定である。
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