研究課題/領域番号 |
23650198
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研究機関 | (財)東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
齊藤 実 (財)東京都医学総合研究所, 運動・感覚システム分野, 参事研究員 (50261839)
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研究分担者 |
堀内 純二郎 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (80392364)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | (1)学習記憶 / (2)老化 / (3)グリア / (4)乳酸 / (5)ショウジョウバエ |
研究概要 |
加齢性記憶障害は脳老化の重要な指標であるが、その分子機構は未だ殆ど分かっていない。我々はグリアにあるピルビン酸カルボキシラーゼ(PC)の活性が、加齢に伴い上昇することが加齢性記憶障害の原因であることをショウジョウバエで見出した。では何故PC 活性が上昇すると加齢性記憶障害が起こるのか? グリアからは乳酸が、神経活動に応じて神経細胞に供給される[グリア-神経乳酸シャトル(GNLS)]。我々は生理的意義が不明だったGNLSが学習記憶に必要であり、加齢性記憶障害はPC の活性上昇によりGNLS が低下したことによる乳酸低下によるとの仮説を立て、本研究で検証を行なった。先ずGNLSを担う乳酸合成酵素LDHの変異体で連合学習が顕著に障害されること、また乳酸の輸送に関わるモノカルボン酸トランスポーター(MCT1)の変異体でも同様に顕著な学習障害を見出した。また連合学習により予想通り乳酸レベルが上昇することを確認し、予備結果のとおり、加齢体に乳酸を摂取させると顕著な加齢性記憶障害の改善がみられることを確認した。そこで加齢体で乳酸レベルが低下しているか調べたところ、予想外にも加齢体では乳酸レベルが学習後に上昇した乳酸レベル程度にまで上昇していた。では何故PCの活性上昇により加齢性記憶障害が起こるのか? dPCの活性上昇により産生が上昇するオキサロ酢酸とオキサロ酢酸から産生されるアスパラギン酸には、グリア由来のNMDA受容体アゴニストであるD-セリンを産生するセリンラセマーゼ(SR)に対する阻害効果があることに着目し、老齢体でD-セリンレベルを調べたところ、顕著な低下がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予想と異なり、乳酸による加齢性記憶障害の改善効果の生化学的背景は具体的にはつかめなかったが、GNLSが連合学習に必要なことが遺伝学的解析、薬理学的解析により示すことが出来たから。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果からD-セリンと加齢性記憶障害との関わりは生化学的解析から示唆されている。そこで実際にD-セリンにより加齢性記憶障害が改善するのか?またdPC活性を人為的に上げればD-セリンレベルが低下し、加齢性記憶障害と同様の記憶障害が現れるのか?等について検証を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費70,000、旅費50,000、その他20,000
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