研究課題
脱ユビキチン化酵素UCH-L1は多機能蛋白として作用することをこれまで報告してきたが、今回はまず初めにその細胞外分泌がunconventional pathwayによること,また、パーキンソン病関連物質が存在するとその細胞外分泌に変動が生じることを見いだした結果につき、論文報告をした。今回の論文は、UCH-L1の細胞外分泌に関し、パーキンソン病関連物質間で新規相互作用が存在することを示唆する。また、細胞外に存在するUCH-L1が細胞内に取り込まれるかどうかを検討したが、遊離UCH-L1を使用した場合は、明確な細胞内取り込みを確認するには到らなかった。今後、exosomeなど遊離型でない状態でUCH-L1の取り込みを測定する予定である。細胞内事象については、UCH-L1の新規作用として、アミロイドベータ産生に関わる酵素、BACE、の機能を調整する可能性を見いだした。この結果は、UCH-L1がアルツハイマー病治療薬の標的としても重要であること示唆する。また、S18Y多型体が野生型に比してドパミン作動性システムで、神経細胞保護的に作用をすることを見いだした。細胞外UCH-L1量と病態の関連性について、神経疾患に罹患した患者由来脳脊髄液を解析した。その結果、対照に比べ、ある症候群ではUCH-L1量が増加傾向にあることを見いだした。今後例数を増やして有意差等を検証していく。UCH-L1の末梢性作用として膵臓beta細胞の生存性と機能に関わることを新たに見いだした。
2: おおむね順調に進展している
細胞外UCH-L1の細胞内取り込みを実証するにはまだ至っておらず、細胞外UCH-L1の生理作用、病態生理作用に関する研究が当初計画より遅れている。しかし、新たな生理作用を見いだすなど、予想外の成果も上がった。以上総合的に勘案し、上記の判定とした。
細胞、モデル動物を適宜使用し、細胞外に存在するUCH-L1修飾・変異体(酸化型、I93M型)の細胞毒性の実証、神経細胞の生存性とUCH-L1分泌性の関連性解明、細胞外UCH-L1のsystemic作用の解明、患者試料の解析について継続する。
細胞生物学、分子神経科学的解析については原則前年の使用を踏襲する。ただし、モデル動物の作製と解析などについては前年度を上回る経費を予定している。
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