研究概要 |
脱ユビキチン化酵素UCH-L1は神経変性疾患やがんの病態に関わることが見いだされている。我々は、細胞内在的に多機能蛋白として作用することをこれまで報告してきたが、今回の研究では培養細胞を用いて、UCH-L1が細胞外に分泌されるか否か、分泌される場合はその分泌形式、分泌されることの生物学的意義について明らかにすることを目指した。その結果、UCH-L1の分泌がunconventional pathwayによること,また、exosomeを介した分泌が存在することを見いだした。また、パーキンソン病関連I93M変異が存在すると、その分泌量が低下することを見いだした。さらに、神経変性疾患原因蛋白質との相互作用について解析し、病原性変異型αシヌクレイン、ハンチンチンの存在はUCH-L1の分泌を低下させることを見いだした。この結果は、UCH-L1の細胞外分泌に関し、パーキンソン病関連物質間で新規相互作用が存在することを示唆すると同時に、細胞外分泌に何らかの生理学的作用が存在する可能性を示す。そこで、細胞外に存在するUCH-L1が細胞内に取り込まれるかどうかを検討したが、遊離UCH-L1を使用した場合は、明確な細胞内取り込みを確認するには到らなかったので非遊離型UCH-L1の取り込みについて検討中である。また、細胞外分泌の生理的的意味を明らかにする目的で、細胞内事象についての解析も行い、UCH-L1の新規作用として、CDK分子の内在性アクチベーターであること、また、アミロイドベータ産生に関わる酵素、BACE、の機能を調整する可能性を見いだした。さらに、S18Y多型体がドパミン作動性システムで神経細胞保護的に作用をすることを見いだした。他方、UCH-L1の末梢性作用として膵臓beta細胞の生存性と機能に関わることを新たに見いだした。
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