研究課題
研究目的ギャップ結合(GJ)は細胞間をつなぐイオンや低分子の通路の一つで、成熟脳ではグリア細胞間のみならず、一部の神経核の樹状突起間や無髄軸索束間でも報告され議論を呼んでいる。一方申請者らは、成熟動物の中脳黒質網様部(SNr)で、抑制性軸索終末とみられる構造間にGJ様構造を電子顕微鏡で観察した。真実なら、脳の情報処理様式の理解に影響する可能性もある。そこで、抑制性軸索終末からパッチクランプを行い、GJの存在を機能的に検証することを目指す萌芽期の研究を実施する。成熟動物の脳の抑制性軸索終末は通常1micron以下と極端に小さく、過去に報告がない。実施計画興奮性軸索終末の記録は独グループがFM1-43色素により可視化し、成功しているが、抑制性終末では成功していない。そこで研究期間中(一年間)に、黒質で抑制性軸索終末を選択的に可視化・同定する方法の樹立を目指し、パッチクランプ記録の基盤技術とする。研究成果FM1-43では蛍光像が経時的に変化し、樹状突起も染まる上、興奮性か抑制性かを決定できない。抑制性ニューロンは通常GABA合成酵素GADにより可視化されるが、小脳や大脳皮質と異なりSNrの同種ニューロンはGADの強い陽性信号を示さず、免疫電顕観察でVesicular GABA transporter(vGAT)を豊富に発現することが判明した。そこでvGAT-Venusマウスを柳川教授より御供与を受け、安定なクローズドコロニーを形成させた。更に、機械単離と酵素処理を組み合わせた細胞単離法を考案し、軸索終末が結合した状態の生きた黒質神経細胞を安定に得て、その樹状突起や細胞体に終止するVenus陽性GABA性軸索終末を、リアルタイムレーザー共焦点顕微鏡上で鮮明な3次元ライブ画像として可視化することに成功、目標達成へ向けた重要な技術課題の一つをクリアした。
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Bioorg. Med. Chem. Lett
巻: 21巻 ページ: 4088-4096
DOI:10.1016/j.bmcl.2011.04.148
http://www.med.hirosaki-u.ac.jp/~physiol/index.html