研究課題
本研究では、生きた動物個体の脳において、任意の神経細胞に光を用いて自由に遺伝子導入できる技術を開発する事を目的としている。フェムト秒パルスレーザーを用いて細胞膜の光穿孔を行うことで、広い範囲(500ミクロン四方)に分布する多数(100個程度)のニューロン一つ一つに独立に外来遺伝子を導入することを可能にする。従来の単一細胞電気穿孔法と異なり、遺伝子を導入するために電極を接触させる必要がないため、侵襲性も少なく、極めて自由度の高い方法となり得る。開発した技術を用いることで、2光子イメージングにて活動を記録した複数のニューロンに選択的に外来遺伝子を導入して、その活動を制御することが可能となる。まず、光穿孔による遺伝子導入を行う前に、レーザーを用いて外来分子をニューロンに導入できるかどうかの確認を行なった。細胞膜を透過しない蛍光分子を細胞外に満たし、細胞膜付近でパルスレーザーを照射した。その結果、脳スライス標本および個体脳において光照射したニューロンに選択的に蛍光分子が取り込まれることが確認された。強い光を照射することによるニューロンへのダメージが起こらないかどうかを確認するため、蛍光デキストランを光照射により導入し、24時間後に再度観察したところ、ニューロンの形態に異常は見られず、光照射によるダメージによりニューロンの細胞死などは起こらないことが確認された。これらの条件検討をふまえ、現在、DNAプラスミドを光照射により導入することを試みている。
2: おおむね順調に進展している
マウス個体において、光穿孔により外来分子を導入でき、光照射によるニューロン生存率にも影響がないことが確認されており、計画通りに研究が進んでいる。
これまでの技術開発は順調に進んでおり、現在、DNAの導入を試みているところである。現在までのところ、研究計画の変更を必要とするような困難は発生しておらず、特に問題はない。
カルシウムセンサーや光活性化チャネルの遺伝子導入に必要なDNAプラスミドを調整するための試薬類、プラスチック器具を多く必要とするため主にこれらを購入するために研究費を使用する。また、実験動物としてマウスを使用するが、遺伝子発現の効率向上の条件検討が必要なため、ある程度多くの数のマウスを必要とする。成果発表のための国内学会参加費・旅費に使用する。
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