研究課題/領域番号 |
23650205
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西野 恵里 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70523992)
|
キーワード | パッチ電極 / オレゴングリーンバプタ / 神経細胞 / 蛍光分光法 / 聴覚機能 / 神経回路 |
研究概要 |
本研究は蛍光分子を充填した神経細胞から電気活動に同期した蛍光シグナルを脳の深部から記録解析する事を目指した研究である。 蛍光シグナルを画像として解析する手法として2光子顕微鏡法があり脳の表面に位置する神経細胞のCa応答等の詳細な解析は既に行われている。しかし、2光子顕微鏡法の到達深度は高々1mm程度が限界であり、脳の深部で行われている様々な神経活動を解析するには不向きである。本研究はパッチ電極を改良し素材に石英ガラスを用いる事でガラス管の長軸方向の光透過性を増し、同時に分光計およびCCDカメラの組み合わせで脳の深部の神経活動を記録解析する事ができた。オレゴングリーンBAPTA-1というCa指示性の試薬を個体脳に注入する事で神経細胞を染色し、本年度は聴覚刺激に対応するCaシグナルを記録する事ができた。さらに、パッチ電極内に詰める溶液を工夫する事により、GABA受容体を抑制する事で、聴覚応答が極めて大きくなった。抑制性のシナプスが興奮性の上向性のシグナルと同期して入力する事で、興奮性シナプス機構が抑えられ、一方では感度の高い聴覚情報処理を実現するメカニズムとして機能する事が示唆された。なお、本研究はさらに時間分解能を高める為に平成24年度は光電子増倍管を購入し干渉フィルターとの組み合わせでアンサンブル計測による高い時間分解能のシステムを開発中であり、基本型を年度内に完成する事ができた。時間分解能の向上とともに蛍光シグナルの検出感度も向上しこれまでのおよそ2倍のS/Nでパッチ電極からの蛍光シグナルを捉える事ができた。今後、高速高感度蛍光電極法として確立する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究で開発した蛍光分光機能を持ったパッチクランプシステムは現在個体動物脳の神経回路機能に密接に関連した神経細胞Ca応答を解析するのに成功している。さらに、電極として神経活動を記録すると同時に、電極内液を介して様々な化合物を脳の深部に送る事ができ、シナプス作用の解析にも応用できている。これは、当初予定した神経細胞に発現した蛍光物質からの測光以上の実験展開が可能となり、当初計画以上に進展したと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は高速高感度の分光パッチ電極法として完成させるとともに、多くの研究者が使える研究システムとして広めたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初の目標であった、蛍光シグナルを計測するための分光器を用いたシステムの開発はほぼ完成した。しかし平成24年度中に予定していた学会発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
|