研究課題/領域番号 |
23650209
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
中陦 克己 近畿大学, 医学部, 講師 (60270485)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 歩行運動 / ニホンザル / 一次運動野 / 単一神経細胞活動 / トレッドミル |
研究概要 |
本研究の目的は大脳皮質-基底核ループにおける二足歩行制御機序の実験的解明である。そのため平成23年度では、流れベルトの上を無拘束の状態で四足歩行と二足歩行を交互に遂行する運動課題を修了した1頭のニホンザルを対象に用いて、大脳皮質・一次運動野の下肢・体幹領域から歩行中の単一神経活動を記録し、同時に四肢・体幹の筋活動を記録した。加えて他の2頭のサルに対しても同様の運動課題訓練を行った。現在その1頭では歩行訓練を修了し、平成24年度に行う2頭目の記録実験に向けた手術を段階的に行っている。 本年度に行った一次運動野からの単一神経細胞活動記録では、cortico-motoneuronal cellを含む殆どの細胞から、四足歩行中と二足歩行中の双方において歩行周期に一致した律動的な活動が記録された。この神経細胞の律動的活動様式を四肢・体幹筋の活動と比較することから、(1)歩行中におけるサルの一次運動野は運動によって生じた律動的な体性感覚入力を受け取りながら、脊髄神経回路網の律動的活動をステップ・バイ・ステップで修飾すること、更に(2)この一次運動野の歩行修飾機能は二足歩行においてより強く動員されることが示唆された。以上の様なサル一次運動野のオン・ライン歩行修飾機能は、皮質脊髄路投射の最も発達したヒト二足歩行でより重要な役割を果たしていると推測され、皮質運動野ならびに皮質脊髄路を障害された際に生じる歩行機能異常の病態を説明し得る神経基盤と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では平成23年度中に2頭目からの単一細胞記録実験を開始する予定であった。実際には2頭目のサルにおいて記録実験を開始するには至らなかったものの、歩行運動課題訓練を修了し、かつ記録前手術の一部を行う段階まで実験計画を進めることができた。 以上に加えて1頭目のサルの記録実験では、現在まで明らかにされていなかった一次運動野の歩行制御機序について新たな知見を得ることができた。 以上より本課題の達成度を「やや遅れている」区分に分類した。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度には1頭のサルにおいて歩行訓練を修了し、現在記録実験に向けた手術を段階的に行っている。従って平成24年度には当初の計画に従って、全ての記録前手術をこのサルに対して行った後に、皮質運動領野ならびに淡蒼球内節からの記録実験と各領域への薬物注入実験を行う。従って研究計画の変更はない。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の課題遂行にあたって必須な物品を順次購入した結果、8,938円の次年度使用額が生じた。使用額としては小額であり、意図的に平成24年度で使用するために確保した金額ではない。次年度では記録電極等の消耗品の購入費に当てる予定である。
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