研究課題
本研究の目的は、心不全モデル動物おいて、不整脈・突然死や心臓収縮不全などの致死性病態の発生と中枢神経を介した心臓自律神経活動制御の関係を多角的に解析し、病態の神経性機序の解明及び中枢神経作用薬の評価・開発することである。今年度は、以下の研究を進めた。1)昨年度開発したマウスでの心臓マイクロダイアリシス法を拡張型心筋症マウスに応用し、心臓副交感神経機能を評価した。その結果、正常マウスと比較し、副交感神経機能低下による心筋間質でのアセチルコリン放出低下が見出された。2)拡張型心筋症マウスでのグレリン注射の効果を調べた。その結果、致死的不整脈および心筋線維化の抑制により、生存率が大幅改善した。同時に、心拍変動時系列のスペクトル解析で、グレリンによる心臓交感神経活動の低下および副交感神経活動の増大が示唆された。以上より、グレリンの神経性調節を介した慢性心不全の改善効果が示唆された。3)ラット心筋梗塞における急性期グレリン単回注射の効果を、心筋梗塞発症2週間後に調べた。その結果、グレリンは、生存率改善、心臓線維化(リモデリング)抑制、心収縮機能改善作用を有することが分かった。同時に、心臓交感神経電気的活動の有意な低下を見出した。4)グレリンの中枢を介した心臓自律神経調節を明らかにする目的で、家兎の脳室へのグレリン投与時の心臓間質ノルエピネフリンとアセチルコリン放出の変化を調べた。その結果、アセチルコリンのみの放出増大を見出した。以上を総合して、拡張型心筋症および心筋梗塞モデル小動物を用いた慢性心不全においては、心臓自律神経活動の制御により、致死的不整脈抑制、リモデリング抑制、心機能改善および生存率改善が得られた。グレリンは、末梢の求心性神経への作用と中枢への直接作用を介して、心臓交感神経活動を抑制、副交感神経活動を増大させることで、上記の慢性心不全改善効果をあらわすと考えられた。
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