研究課題/領域番号 |
23650216
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
市川 和洋 九州大学, 先端融合医療創成センター, 教授 (10271115)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 電位 / 磁気共鳴 / 非侵襲測定 / 神経科学 |
研究概要 |
本年度は、分子電極の電位応答性について溶液レベルでの詳細解析により、既合成済み化合物各分子が有する電位分解能の解析を行った。 生物試料への応用例が殆ど報告されていないため、培養神経細胞及びマウスにおいて、LD50の検討を行った。その結果、電子スピン共鳴計測で汎用されている最大血中濃度1-5mM程度において顕著な有害性は認められなかったことから、in vivo計測に向けた最大投与可能量の目安が得られた。分子電極化合物は電極としての電位応答性は十分有しているものの、計測対象の物理量変化が微小であること、化合物の電子スピン共鳴スペクトル線幅が広く、相対的に感度が低い可能性が考えられた。そこで、線幅から推定される感度低下を補い、動物実験において有効なイメージング感度を実現するため、検出装置の改良に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は電位応答性分子を分子電極として用いる新たな計測法の創生を目的としている。従って、応答性、検出感度、検出手法の適否といった、分子電極としての基本的特性が不明であった。そこで、まずこれら基本的特性の解明を目的とし、当該年度までに予定していた研究項目は、(1)分子電極の電位応答性について溶液レベルでの詳細解析、(2)磁石対応型の電極セル導入による電位-磁気共鳴スペクトル解析、(3)合成済・新規合成の化合物(2種程度)の最大投与可能濃度の評価、である。 研究実績の概要に示した通り、細胞属性あるいは検出感度検討等に関して、研究項目(1)~(3)について当初研究計画を達成している。また、電位応答性を持たない参照化合物と比べて、分子電極分子のスペクトル線幅が広くなる傾向を見出し、付随して生ずる感度低下について、対応策を進めるなど、当初目的の実現に着実に向かっているため。
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今後の研究の推進方策 |
本課題は全く新しいアイデアに基づく生理現象計測基盤の創成を目指すもので、実用レベルでの計測実証が極めて重要である。そこで、基本原理の実証と共に、計測システムの改良など、本研究目的を実現するための諸方策を尽くしている。上述の通り、分子電極は類似構造を有するアミノキシルラジカル化合物に比べて、微小変化・広線幅など、相対的に感度が低くなる傾向が明らかとなった。そこで、23年度は当初予算計画を変更し、SQUID(超伝導量子干渉を用いた高感度計測デバイス)導入による計測感度の向上に着手した。現時点では検出系は仮組みの段階であるが、既存計測器に比べて感度向上が実現できている。そこで、24年度は当初計画どおり、電位分解能の評価や実験動物での計測に着手する。
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次年度の研究費の使用計画 |
第一年度で計測系とその評価がほぼ確立した。そこで、第二年度は電位分解能評価・実験動物での計測を行うため、主に分子電極合成、実験動物購入に研究経費を使用する。
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