本研究では、分子電極分子について細胞毒性試験を行い動物実験で想定される濃度において顕著な有害性を認めないことを明らかにした。また、電位変動に対して想定されるスペクトル位置・画像強度変化量を検出可能な計測装置の高度化を行った。そこで1)分子電極イメージングの課題抽出、2)本法の有効性の実証、3)新たな分子電極分子の合成、について検討を進めた。X-band ESR を用いたスペクトルレベルの検討、オーバーハウザ効果MRIを用いたイメージングレベルの検討の双方において、pH 6-9 程度の電位変動に応じて、分子電極分子の電子スピン共鳴スペクトルあるいはオーバーハウザー効果 MRI のイメージング画像強度がpH 依存的に変動することを実証した。さらに新規物質5種の合成と物性計測を行った。以上の成果により、電位応答性分子を分子電極として生体計測に用いる計測系を確立した。本系では計測領域に分子電極を到達させる必要が有ることから、組織・細胞内小器官送達性を高めるなどの分子合成を進めることで、さらに本法の有効性は向上するものと考える。
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