研究課題/領域番号 |
23650218
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
越久 仁敬 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (20252512)
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研究分担者 |
平田 豊 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (10441247)
岡田 泰昌 独立行政法人国立病院機構村山医療センター(臨床研究センター), 内科, 医長 (80160688)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ニューロングリア相互作用 / カルシウムイメージング / 呼吸リズム生成機構 |
研究概要 |
呼吸リズムは、現在まで、脳幹内の興奮性および抑制性ニューロンから構成される神経回路網によって作られると考えられてきた。本研究では、このような従来の呼吸リズム形成の概念に対して、グリア細胞が呼吸リズム形成を主導している、という新しい概念を検証する。呼吸リズム生成機構の中核であるpreBotzinger Complex(preBotC)を含み、リズミックな吸息性活動を保持する脳幹スライス標本において、数百個単位のpreBotC細胞のCa動態を同時観測したところ、少数(約10%)ながら吸息性バースト活動よりも1-2秒先行してCa上昇を認めるグリア細胞(前吸息性グリア細胞)が認められた。これらの前吸息性グリア細胞は、TTXによる活動電位遮断下においても周期性のCaオシレーションを示したが、振動周期は延長した。また、preBotCグリア細胞を光刺激したところ、吸息性ニューロンの発火が誘発された。次年度には、この前吸息性グリア細胞が積極的に呼吸リズム形成に関与しているかどうかを検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在、ニューロンとグリア細胞の判別は、細胞の大きさ(グリア細胞は細胞体が小さい)、Ca動態(グリア細胞は明るく、rise timeが長く、応答が大きく、減衰時定数が長い)、Sulforhodamine 101に対する染色性(グリア細胞特異的とされる)で行っているが、確実なものではなく、批判的な研究者も存在する。今後、研究を進めるにあたって、ニューロンとグリア細胞の確実な判別法の確立が必須と考えられる。その方法として、当初はグリア細胞特異的プロモーター(GFAP)制御下にCa感受性蛍光蛋白質(GCaMP2)を発現させることにより、グリア細胞選択的にCa活動を計測することを計画していた。しかし、平成23年度は交付予算の関係で遺伝子導入装置の購入ができず、研究計画に若干の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、ニューロンとグリア細胞の確実な判別法を確立しなければならないが、前年度末に、本学に二光子/共焦点顕微鏡システムが導入されたので、GFAP-EGFPトランスジェニックマウスを用いて、グリア細胞をEGFP蛍光で同定しつつ、別の蛍光スペクトルを有する蛍光色素によるCaイメージングを行い、前吸息性グリア細胞のCa動態の特徴づけを試みる。この方法でうまくいかなかった場合に備えて、グリア細胞特異的プロモーター(GFAP)制御下にCa感受性蛍光蛋白質(Case-12)を発現させるウイルスの構築を行っている段階である。
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次年度の研究費の使用計画 |
GFAP-EGFPトランスジェニックマウスを用いたニューロンとグリア細胞の確実な判別が成功するかどうかで研究費の使用計画に変更が生じる可能性があるが、年度前半の検討でうまくいきそうであれば、電気生理学顕微鏡システムに赤色蛍光フィルタセットを導入し、データアクイジションソフトを更新して、当初の計画通り電気生理学実験を行う。
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