超低磁場核磁気共鳴画像装置は形態情報の取得だけではなく、超低磁場化により脳神経活動による微弱磁場変化が核磁気共鳴現象に影響を及ぼし、これにより脳神経活動の様子(機能情報)を画像化できる可能性を秘めている。本研究ではその実現化に伴う具体的な課題を検討し、その解決方法について実験的に検証する。本装置の実現は、従来の脳機能計測装置が抱えていた欠点を補い、脳機能解明研究を飛躍的に発展させることができるものと期待される。 実現化の課題として、静磁場の超低磁場化に伴う核磁気共鳴信号の低周波化の問題がある。その解決法として、信号検出時に核磁気共鳴信号を高周波化する手法を本研究実施前に考案した。本研究では、本手法の有効性を確かめるための実証システムを構築し、試験・評価を行った。 平成23年度は本手法の原理確認のため核磁気共鳴実験システムを構築し、各種基礎データの収集および検討を行った。平成24年度は構築した核磁気共鳴実験システムを用いてより定量的に評価を行った。平成23年度では静磁場として地磁気を用いていたため本来の意味でのスピンエコー法ではなかったが、平成24年度は磁気シールドルーム内でヘルムホルツコイルによる静磁場反転によるスピンエコー法が可能となり、明瞭にエコー信号を観測することできるようになった。これにより非対称スピンエコー法において、それぞれの静磁場に対応した異なる周波数の核磁気共鳴信号が観測され、本手法が正しく動作することが確認できた。また、静磁場強度比とエコー信号の出現タイミングとの関係を定式化し、実験的に確認することができた。さらに、最初の静磁場が低磁場であるほど外部磁場による影響を受けやすくなることが確認され、神経活動による磁場修飾の可能性を確認することができた。 以上の研究成果により、超低磁場機能的核磁気共鳴画像装置の実現可能性についてより確かなものとすることができた。
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