研究課題/領域番号 |
23650225
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
柳川 透 独立行政法人理化学研究所, 適応知性研究チーム, 研究員 (80568858)
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キーワード | ECoG / 脳間相互作用 / コミュニケーション |
研究概要 |
研究の目的:本研究の目的は、社会性の基盤を二頭のサルの神経活動の相互作用のレベルから解き明かすことである。 研究実施計画:平成24年度の研究計画は、23年度から引き続き、社会的相互作用をしている2頭のサルからElectrocorticogram(ECoG)の同時計測を行い、2つの脳の神経活動から社会的相互作用と相関する脳間神経相互作用を調べる解析手法を開発するという予定を立てていた。 具体的内容:脳間神経相互作用の存在を証明するために、環境をコントロールする必要があると考えた。そのために、リッチな情報をもつ過去の映像と現在の映像を自由にすり替えることが可能なシステムを開発した。具体的には、サルにヘッドマウントディスプレイ(HMD)を被せ、頭を固定する。HMDにカメラをつけ、予めサルの視点からの映像を記録しておき、現実の映像を過去の映像を切り替えることができるようにした。このシステムを用いて、エサを渡そうとしている過去映像をサルに見せた結果、サルは過去映像のなかのエサに反応して、手を伸ばした。これは、サルが過去の映像を現在起きていることだと錯覚していたことの証拠だと考えられる。 意義、重要性:このシステムを用いることにより、予めサルの映像とそのときの脳活動を記録しておき、HMDをつけた別のサルに対してその映像を見せることにより、他者の存在がライブなのか過去の映像なのかをコントロールすることができる。これにより、HMDをつけたサルにとって、相手ザルがいるように見えるけれど、まったくインタラクションが成立しない人工的な状況をつくりだすことが可能となる。こうして、相手ザルとの関係がインタラクティブなのか非インタラクティブなのかに応じて、脳間神経相互作用がどのように変化するのかを解明することが可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初計画していた、二頭の間で、社会的な関係を変化させる有効な手段として考えていたマジックミラーによるアイマスク条件がうまくいかなかったので、その代替案として、二頭のサルがいるとき、一頭のサルから見て、二頭目のサルがライブでいてインタラクションが可能な状況なのか、それとも過去の映像でインタラクションが不可能な状況にいるのかをコントロールし、そのときの二頭の脳間相互作用を調べることにした。そのために本年度は、そのシステムの開発を行った。
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今後の研究の推進方策 |
サルがHMDを通してみている相手ザルの映像が、ライブの場合と過去の映像の場合という二つの条件における、脳間相互作用を計算する。ライブの場合、二頭同時計測により記録した神経活動の間の脳間相互作用を計算する。過去の映像の場合は、過去映像を録画したときに記録した相手のサルの神経活動と、HMDをかぶっているサルから現在記録されている脳活動の間の脳間相互作用を計算する。これにより、インタラクションが可能な状況とそうでない状況において、二頭のサルの間の脳間相互作用がどのように変化するのかを調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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