研究概要 |
本研究では、腫瘍細胞親和性を有するパルボウイルス由来プロモーター制御下でレポーター遺伝子を発現するマウスを作製し、発がん組織を蛍光in vivoイメージングで観察可能なモデルマウスを開発することを目的とした。 はじめに、CREB, E2F, Ets1, SP1等の腫瘍細胞で活性化する転写因子結合サイトを持つパルボウイルス非構造タンパク(NS)のP4プロモーターにEGFPを連結した遺伝子をもつトランスジェニックマウス(P4-EGFPマウス)を作製した。本マウスは生後20日以上の精巣において、精母細胞で特異的にEGFPが発現することが確認されたが、哺乳マウスおよび成体の精母細胞以外の主要組織ではEGFP発現は認められなかった。併行して、EGFP発現組織の蛍光イメージング装置での観察について、別に作製したCre制御により特定組織でEGFPを発現するトランスジェニックマウスを用いて、観察条件の検討を行った。次に、P4-EGFPマウスとヒト由来のプロト型がん遺伝子c-Ha-rasを持つC57BL/6J-Tg rasH2マウスを交配し、両遺伝子を有するマウス(Ha-ras/P4-EGFPマウス)を得た。また、MNU投与によりP4-EGFPマウスに実験発癌させ、これらの腫瘍を生じたマウス生体について蛍光イメージング装置で腫瘍部分の観察を行ったが、EGFPによる蛍光は観察されなかた。摘出した腫瘍組織について蛍光観察および免疫染色によるEGFPの発現を観察したところ、一部のマウス腫瘍においてEGFPの発現を認めた。また、精母細胞でのEGFPの発現に変化は認められなかった。 P4-EGFPマウスは、精母細胞で特異的にEGFPを発現し、発癌処置により生じた腫瘍組織でもEGFPの発現が認められたが、発現強度は低く、in vivoイメージングにより生体下で発癌過程を観察することはできなかった。
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