研究課題
これまでの研究により,β4GalT-I欠損マウスの骨髄細胞はX線照射した野生型マウスに尾静脈から移植しても,レシピエントの骨髄に生着しないことを見いだした。β4GalT-I欠損骨髄細胞はレシピエントの造血系を再構築できないだけでなく,移植後短時間(3時間と24時間)での骨髄への生着が顕著に減少しており,骨髄幹細胞(HSC)の骨髄へのホーミングが障害されている可能性が示された。しかし,尾静脈から移植した場合は,HSCは全身を回って骨髄に到達するので,途中で肝臓などにトラップされて骨髄に到達できない可能性も考えられる。 そこで,関西医大の池原先生らが開発した骨髄腔に直接移植する骨髄内骨髄移植法を試みた。尾静脈移植と同様に,β4GalT-I欠損骨髄細胞はレシピエントの造血系を再構築できず,移植後短時間の骨髄への生着率も顕著に低かった。したがって,β4GalT-I欠損骨髄細胞は途中でトラップされるのではなく,骨髄に生着できないことがわかった。 骨髄に生着できない原因として,HSCにおけるガラクトース糖鎖欠損が考えられる。そのことを明らかにするために,レンチウイルスベクターを用いてβ4GalT-I欠損HSCにβ4GalT-I遺伝子を再導入することを試みた。現在,高力価のレンチウイルスベクターの調製や効率的なHSCへの感染についての条件検討を行なっており,条件が整い次第,β4GalT-I遺伝子を再導入したHSCを用いて,骨髄へのホーミングを解析する。
3: やや遅れている
レンチウイルスベクターによるβ4GalT-I欠損HSCへのβ4GalT-I遺伝子の再導入に手間取っているが,早急に最適条件を見つけて次のステップに進むつもりである。
レンチウイルスベクターによるβ4GalT-I欠損HSCへのβ4GalT-I遺伝子の再導入ができて,骨髄へのホーミング活性の回復に成功すれば,HSCのガラクトース糖鎖が骨髄へのホーミングに必須の分子であることがわかる。レンチウイルスベクターを用いて野生型HSCとβ4GalT-I欠損HSCにβ4GalT-I遺伝子や他の糖転移酵素遺伝子を導入して,ホーミング活性に与える影響を解析するとともに,β4GalT-I欠損HSC細胞表面の糖鎖構造解析に着手する。
23年度はレンチウイルスベクターで少し停滞したので,研究費を若干繰り越したが,24年度は予定通り研究を進める。マウスの飼育経費や骨髄細胞の培養,糖鎖構造解析のためのレクチンなどに研究費を使用する。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
PLoS ONE
巻: 7 ページ: e29873
10.1371/journal.pone.0029873
Gastroenterology
巻: in press ページ: -
10.1053/j.gastro.2012.02.008
J . Biol. Chem
巻: 286 ページ: 31337-31346
10.1074/jbc.M111.233353
http://asrc.w3.kanazawa-u.ac.jp/