研究課題/領域番号 |
23650232
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
浅野 雅秀 金沢大学, 学際科学実験センター, 教授 (50251450)
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研究分担者 |
橋本 憲佳 金沢大学, 学際科学実験センター, 准教授 (50242524)
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キーワード | 糖鎖 / 骨髄幹細胞 / 骨髄移植 / ホーミング |
研究概要 |
β4GalT-I欠損マウスの骨髄細胞はX線照射した野生型マウスに尾静脈から移植しても,レシピエントの骨髄に生着しないことを見いだした。そこでより直接的な方法である骨髄腔に移植する骨髄内骨髄移植法を試みたが,移植後の生存率も移植後24時間の骨髄への生着率も尾静脈からの移植と同じように激減した。したがって,β4GalT-I欠損骨髄細胞は骨髄へのホーミングに障害があることがわかった。 骨髄に生着できない原因として,造血幹細胞(HSC)表面におけるガラクトース糖鎖あるいはその先のシアル酸が重要な役割を果たしていることが考えられる。骨髄細胞からマグネット粒子を用いてLineage陰性(CD3e, CD11b, B220, Ly-6G, Ly-6C及びTER-119陰性)のHSC画分を調製して,その細胞をガラクトシダーゼ(ガラクトースを切断)あるいはシアリダーゼ(シアル酸を切断)で処理して,骨髄移植実験を行った。シアリダーゼ単独の処理とシアリダーゼ+ガラクトシダーゼ処理のいずれにおいても,移植後24時間の骨髄への生着率がコントロールの約1/7に激減した。以上のことから,HSC表面の特にシアル酸が骨髄へのホーミングに重要であることがわかった。なお,レンチウイルスベクターを用いてβ4GalT-I欠損HSCにβ4GalT-I遺伝子を再導入することを試みたが,FACSで分取したHSCに対して効率よく遺伝子を導入することができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
レンチウイルスベクターによるβ4GalT-I欠損HSCへのβ4GalT-I遺伝子の再導入に難航している。HSCの調製方法やベクターの構築を再検討するとともに,今後の研究方策に述べるシアル酸合成酵素点変異マウスの解析を先に進める。
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今後の研究の推進方策 |
HSCをシアリダーゼで処理する実験で,シアル酸の重要性が示唆された。当研究室ではシアル酸生合成の鍵酵素であるGNEの点変異マウスを保有している。GNEの完全欠損マウスは胎生致死であるが,この点変異マウスはシアル酸の合成が抑制されており,腎臓糸球体上皮細胞に異常を生じて,ネフローゼ症候群様の病態を発症することを報告した(PLoS ONE 7: e29873, 2012)。このマウスのHSCの骨髄移植を行ない,シアル酸の重要性を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度は新たにGNE点変異マウスも導入して骨髄移植の研究を推進する。マウスの飼育経費や骨髄細胞の培養,糖鎖構造解析のためのレクチンなどに研究費を使用する。
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