申請者はこれまで、哺乳動物細胞において網羅的遺伝子機能解析を可能にするために、マウスES細胞において、多数のホモ変異体を簡便に単離する方法を開発してきた。しかし、個々のホモ変異体を個別に解析するのでは網羅的遺伝子機能解析は達成困難と痛感し、本申請の表現型解析の迅速化を提案するに至った。具体的には、ランダムな配列(バーコード)を有すベクターのライブラリーを作製し、個々の変異細胞を異なるバーコードでラベルした。変異細胞をプールした上で種々の条件(分化誘導)で培養し、各条件下でのバーコードを定量することで各変異体の存在比率の推移を解析した。表現型を有す細胞は、バーコードの出現率の変化で同定されるはずである。 1.バーコードを導入したベクターのライブラリーの作製-60塩基のランダムなバーコード配列を有すベクターを、約90種類作製した。バーコードの導入に際しては、ランダムな塩基の部分はオリゴで合成し、それをPCRで増幅して、ベクターbackboneへクローニングした。 2.バーコードの検出効率の検討-バーコードベクターを混合して、マウスゲノムDNAで希釈することで、「バーコード導入後の細胞集団からゲノムDNAを抽出した状況」を模倣した鋳型DNAを調製した。PCRによるバーコード領域の増幅を、独立して3回行った後、次世代型シーケンサーを用いて、各バーコードの出現率を比較した。バーコード間で、増幅効率の差を認めはしたが、各バーコードにおけるread数は、3回のPCRでほぼ一定であることから、各細胞の増減をバーコードのread数で推測できることが示された。 3.バーコードを利用したホモ変異体の表現型解析-バーコードで標識したホモ変異体の集団に対して分化誘導やDNA損傷実験を行い、その前後でゲノムDNAを抽出して、上記の方法により各バーコードの存在比率を定量し、表現型を有す変異株のスクリーニングを行った。
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