研究課題/領域番号 |
23650238
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
峰 和治 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (50209839)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | スンクス / 皮膚創傷 / モデル動物 |
研究概要 |
本研究の目的は、皮膚創傷の動物実験モデルとしてスンクスが利用可能かどうかを形態学的視点から探ることである。その第一段階として平成23年度は、皮下組織に分布する血管・神経・筋の走行や相互の位置関係を詳細に把握する作業を実施した。本年度は、既に保有しているスンクス24個体を材料として、注入標本による血管の走行観察、皮神経のSihler染色、および皮幹筋の剖出を行った。 左心室あるいは腹大動脈から着色ラテックスを注入した材料により、体幹背側を中心とした皮下の動脈走行を詳細に観察した。背側皮下には、肩甲骨と寛骨それぞれの前・後端位に、浅層への動脈湧出点が見られた。これらの動脈は前後方向に延びて互いに吻合し、脊柱の両脇に明瞭な縦走路を形成していた。この動脈幹と直交する方向に延びる多くの細枝が、体幹背側皮下の全域を覆うように分布し、正中線上では左右側の吻合も確認された。これら横走枝の末梢では、脊髄神経皮枝との伴行関係が見られた。一方、静脈系では、体幹尾側における皮下の還流経路として深腸骨回旋静脈の重要性が認識されたため、比較解剖学的な検索を追加した。 スンクスの皮幹筋の主体となるのは、腕腹筋と腕背筋であった。これらはともに上腕骨に起始し、それぞれ体幹腹側と背側の真皮、皮下組織あるいは筋膜に停止していた。このほかに、基本層を構成する両筋から分化したと考えられる薄い筋が最浅層に存在しており、体幹のほぼ全域が皮幹筋に覆われていると見なされた。皮幹筋は全て、尾側胸筋神経に支配されていた。皮神経としては、脊髄神経腹側枝・背側枝およびそれぞれの内側皮枝・外側皮枝の分節的な配列が観察された。 このような形態学的データは、次年度に予定している皮膚創傷実験を行うに当たって、段階的な条件設定や結果の評価・解釈の基礎資料になると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度は、スンクス皮下組織の構造に関する形態学的な基礎資料を得ることが目標であった。当初期待していた新材料の無償提供がなく、既存の標本を用いた作業が主となった。新鮮材料ではないため、組織標本の作製に手間取り、現時点では構造模型の作成に至っていない。その作業の進行を急いでおり、肉眼的所見も十分に得られているので、次年度の計画を進めるに当たっては支障ないものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に得られた形態学的な基礎資料に基づき、以下の研究を行う。1.創傷治癒実験(作創位置と条件の設定、創の作成、治癒状態の観察)2.治癒所見の形態学的な評価3.動物モデルとしての有効性の判定4.報告書の作成と成果発表
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、以下の項目で経費を使用する計画である。1.スンクスの新鮮個体を入手するための購入費用と飼育費用2.観察切片作製のための研究補助者の雇用3.成果発表のための1回分の旅費4.報告書印刷費
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