研究課題/領域番号 |
23650243
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
小出 剛 国立遺伝学研究所, 系統生物研究センター, 准教授 (20221955)
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キーワード | マウス系統 / 愛玩化 / 毛色 / 遺伝子 / コンジェニック系統 |
研究概要 |
研究初年度である平成23年度には、Agouti遺伝子座と咬みつき行動との関連を調べるために、JF1系統にAgouti遺伝子座(遺伝子型はA/A)を導入した系統とMSM系統にnonagouti(遺伝子型はa/a)を導入した2種類のコンジェニック系統を作成してきた。すでに遺伝的背景をかなり置き換えることに成功しており、毛色遺伝子座と行動との関連を解析するうえで有効なマウス系統が作製できている。平成24年度には、これに加えて、JF1系統に特徴的なWhite spotting(piebald)の原因遺伝子座であるEdnrb遺伝子座をMSM系統に導入してきた。また、これらの系統を用いて行動を調べるために、咬みつき行動や他の行動項目について解析するための行動テスト系の確立などの準備を進めてきた。これまでにハンドリングテストなどを考案し、予備実験も進めており、実際のマウスを用いた解析が可能になりつつある。 JF1系統でEdnrb遺伝子の発現量を一定の割合で増幅させることで、White spottingの大きさを調節するための遺伝子導入マウスの作製のための準備も進めている。このように、MSM系統の遺伝的背景に様々な毛色遺伝子座を導入したマウス系統の開発とその行動形質を解析するための行動テストを確立してきた。 また、JF1系統の毛色遺伝子EdnrbとAgoutiや他の毛色遺伝子座エピスタティックな相互作用の解析を進めている。これまでに、Ednrb遺伝子座の突然変異により生じるWhite spottingの大きさを変化させる相互作用遺伝子の同定に成功しており、今後、行動への影響についても解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
私たちは、日本産愛玩用マウス由来の系統として国立遺伝学研究所で樹立され、一般的な実験用系統とは遺伝的に大きく異なるJF1系統を用いて従順化に関わる遺伝子の同定を進め、そのJF1を行動遺伝学研究に適した我が国を代表するリソースとするために、その基盤の確立を目指して研究を進めている。 これまでに、Agouti遺伝子座、Ednrb遺伝子座、c-Kit遺伝子座、その他のエピスタティックに相互作用する遺伝子座などについて、コンジェニック系統の作製を進めており、研究遂行に必要なリソースの開発が順調に進んでいる。また、咬みつき行動を解析するための行動テストの開発も進んでおり、実際に行動を解析するための環境も整ってきている。すでにコンジェニック系統作製は行動の解析に必要な遺伝的背景の置き換えが十分に進んでおり、今後は実際の解析が可能になっている。また、毛色遺伝子のトランスジェニックによる導入も進めており、研究遂行に必要なリソースの準備が整ってきている。今後はより表現型の解析に重点を移して研究を進める予定でいる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である平成25年度は、これまでに作製してきたマウスリソースを用いた表現型の解析を進める。 これまでに作製してきた、Agouti遺伝子座、Ednrb遺伝子座、c-Kit遺伝子座、その他のエピスタティックに相互作用する遺伝子座などに関するコンジェニック系統を用いて、実際に行動解析を行い、親系統であるMSMやJF1と比較して、行動の変化がみられるかどうか検討する。解析には、これまでに確立してきた行動解析系を用いる。具体的にはマウスの愛玩化テストと呼ばれるテストと、咬みつき行動を解析するための行動テストの二つを行う。それ以外にも一般的な活動量や不安様行動に関するテストも行う。 また、毛色遺伝子のトランスジェニックによる導入も進めており、これに関しても行動解析を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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