研究課題
日本産愛玩用マウスに由来し特徴的な白と黒のぶち模様を有するJF1系統が高度の従順性を示す一方で、日本産の野生マウスに由来するMSM系統は、未だに俊敏で臆病かつ人に対する咬みつき行動なども示し、いわゆる野生的な行動を未だに示している。このように高度な従順性を示すJF1は、人が過去長い年月をかけて、日本産野生マウスから選択交配と新たな突然変異を蓄積し、従順な行動形質を示すようになったと考えられるが、その従順化の遺伝的機構はいまだ明らかになっていない。JF1のぶち模様はpiebald変異として知られ、Ednrb (Endothelin receptor typeB)遺伝子の第1イントロンにレトロポゾン様因子が挿入されることによりEdnrb遺伝子の発現量が低下し、メラノサイトの増殖に異常が生じることで白いぶちが生じる。我々は、このpiebald変異について、レトロポゾンが抜けた復帰突然変異体(JF1-s+)を得ており、このマウスではEdnrb遺伝子の発現量が正常に戻ることで、全身黒い毛色を示す。この2種類のマウスの行動解析により、捕捉により引き起こされる咬みつき行動の出現頻度を調べた結果、ぶち模様を示すJF1は咬みつき行動を示さないが、JF1-s+は高い頻度で咬みつき行動を示すことを明らかにした。このEdnrb遺伝子座の効果を明らかにするために、JF1の毛色遺伝子(Ednrb遺伝子)をMSM系統に戻し交配により導入したコンジェニックマウス系統を作製した。その結果、このJF1型のEdnrb遺伝子を持つコンジェニック系統は噛みつき頻度の減少がみられ、また低い不安様行動を示すことを明らかにした。このEdnrb遺伝子の効果をより直接的に明らかにすることを目的として、現在、このコンジェニック系統への野生型Ednrb遺伝子の再導入トランスジェニックマウス作製を進めている。これらの解析を通して、Ednrb遺伝子の野生行動との関連を明らかにできるものと期待できる。
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