研究課題/領域番号 |
23650245
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
松橋 信平 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究員 (50354965)
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キーワード | イメージングプレート / イン・ビボ・イメージング |
研究概要 |
2枚のイメージングプレート(IP)を用いてマウスなどの小動物を対象とした新しいイメージング法を開発し、in vivoイメージングによるRI標識薬剤の2次元分布計測への応用を目指す。H24年度は、2枚のIPで検出された放射線量から線源までの距離を導出するために、IPに入射するγ線をコリメートして2枚重ねにしたIPの上側IPによる影響を評価し、線源位置を推定した。モデル線源として、186 keVのガンマ線を放出するRa-226密封線源(51kBq)を用いた。IPを用いた計測では、初期化したIPを2枚重ね、IPの上に断面が2cm角の鉛棒2本を0.5mmの平行なスリットができるように置き、スリット上にRa-226線源を置き、暗黒下で15分間露光した。露光後のIPについて検出強度のプロファイルを求めた。線源に近い上側のIP(IP-1)で検出したピーク強度と下側のIP(IP-2)で検出したピーク強度の比は1:0.69となり、IP-1により約30%のエネルギーが損失したと考えられた。一方、線源からのガンマ線をコリメートせずに露光したIPでは、IP-1とIP-2のピーク強度比は1:0.66となり、コリメートしたガンマ線による露光での強度比とほぼ同じとなった。これらの結果は、IP-1によるピーク強度の減少は、入射したガンマ線の方向に依存するものではなく、IPによるエネルギー損失にのみ依存することを示唆していると考えられた。これを踏まえ、IP-1およびIP-2におけるエネルギー分布のプロファイルにおいて、エネルギーピークの半値における半値幅が線源からのガンマ線の空間的な拡がりを示していると仮定し、線源からIPまでの距離を求めたところ、2.9mmとなり、実際の距離2.5mmに近い値が得られ、IPから離れたところにある線源位置を推定できることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究が目指すイメージング法の開発では、露光後のIPに記録された情報が、読み取り機を通して出力される際にどのような変換式で処理されて数値データ化されるかが、照射線量とIPに記録された情報との関係を数式化する上で不可欠な情報である。研究開始当初から読み取り機からの出力値がどのように求められているかについて製造メーカーに問い合わせ、開示を求め続けてきたが、秘匿情報に該当するという理由で開示が得られなかった。このため、露光後のIPに記録された情報(照射線量)と読み取り機を通して出力された数値データとの関係を実際の計測から求め、確認するための作業が不可避となり、このための計測と解析を実施したため、当初計画に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度の遅れを取り戻し、当初目的を達成するために、実施する計測等を絞り込むとともに、読み取り機からの出力データをPC上に移行し解析を容易にするためのソフトウェアを外注により構築するなどの効率化を図る。 具体的には、ルテチウム177(Lu-177)を定型のろ紙に塗布したモデル線源をイメージングした画像データからモデル線源の位置と形状を求めるためのアルゴリズムを作成する。このアルゴリズムについては、EGS4によるシミュレーションにより妥当性を検証する。ここまでをH25年度の上半期に実施する。この成果を踏まえ、下半期にはLu-177を含むゲルをマウス体内にモデル線源として導入し、これが作成したアルゴリズムでイメージングしたデータから求められるかを検証するとともに、手法の最適化を図る。これらを実施することにより、本研究の最終目標である、2枚のIPを用いたマウスのイン・ビボ・イメージングを実現する。
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次年度の研究費の使用計画 |
H25年度は、今後の研究の推進方策に示したように、読み取り機からの出力データをPC上に移行し解析を容易にするためのソフトウェアの外注費が当初計画と別に必要となるが、H24年度からの繰り越し分があり、これで賄うことができる予定である。また、計測に用いるLu-177線源の購入、マウスを用いた計測にかかる費用、その他、RIを用いたイメージング計測とデータの解析に必要な研究消耗品等については、当初予定通りこれらを購入し、使用する。その他、得られた成果を発表するための費用、研究打合せ等のための旅費、資料の購入等に研究費を充てる予定である。
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