ヒト・マウス間の高次運動機能の比較解析のための生体力学モデル相互マッピングの定式化を行い、ソフトウェアとして実装した。この際、マッピングのための数理モデルを、コンピュータグラフィックスの分野で用いられる手法を用いて詳細化するとともに、必要な解剖学的ランドマークについても再検討を加えた。ヒト-マウス間に約200カ所に解剖学的ランドマークを設定するるとともに、4種類のランドマークを用いることで、ヒト骨格からマウス骨格へのデフォメーションを生物学的に整合性を保ちつつ行うことに成功した。デフォメーションにおいて想定外の事象(マッピングの綻び等)が生じた場合は、既存の進化解剖学的な知見に基づき慎重に修正を行った。 結合組織特異的に発現する遺伝子の全身レベルでの3次元発現データをもとに、解剖学的な情報(特に筋肉の付着部位)を半自動的に推定するためのアルゴリズムを考案・実装し、特にマウス後肢の複数の筋肉の付着部位を推定した。 ヒト疾患モデルマウスを用いた運動機能計測のための追加実験を行い、マウスの運動表現型とともに運動時の力計測を自主開発した3種類の計測装置を用いて行った。その際、運動計測法の効率化について再検討を行い、いくつかの工夫により上記改良したマウス神経筋骨格モデルを用いて、逆運動学解析及び逆動力学解析を行った。 これらの成果を踏まえ、将来の国際共同研究を前提とした国際ワークショップにオーガナイザの1人として参加し、今後の方針(特にマウス神経骨格モデルの脳神経科学における活用)について関係者と協議を行った。ワークショップのウェブサイトに発表内容の概要等を記載した。 また、本研究に関連して、生体力学モデルと進化遺伝学の重要性を主題とした学部から大学院生向けの教科書の執筆を行い、2014年に出版した。
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