今年度は,昨年度開発・改良した光ピンセット,観察チャンバ,超音波照射部を用いて評価実験を行い,光ピンセット装置については更なる改良を加えた.その上で,心筋細胞刺激実験を行い,本手法の有効性を調べた.なお,当初,血管内皮細胞を用いた検討も目的としていたが,心筋細胞について興味深い知見が見出されたためその検討を優先した. ○気泡捕捉能の向上 捕捉能のさらなる向上を目指し光ピンセットの改良を行った.1)気泡を捕捉するためのドーナツ型のビームをラゲールガウシアンビームからベッセルビームに変更することにより,光強度を1.8倍に,光捕捉力を2.4倍に向上した.2)光ピンセットで気泡を捕捉する場合,ビーム光の放射力により生じる気泡周囲の液体の流れが気泡を押し上げる方向に働き,気泡の捕捉能を低下させていた.そこでビーム焦点の先にミラーを配置し,進行ビームと反射ビームを重ね合わせることにより周囲液体の流れを軽減し得ることを確認した.現在,改良した光ピンセットシステムを用いてビーズの3次元位置の制御に成功しており,今後気泡への適用を目指し検討を続ける. ○心筋細胞刺激 昨年度開発した観察チャンバを実際に心筋細胞の培養に使用し,ラット新生仔から単離した心室筋細胞が自律拍動を再開すること,電気刺激により長期間安定にぺーシングできることを確認した.さらに,培養細胞に気泡を接触させた状態で超音波照射することにより機械刺激でもぺーシングができることを確認した. ○さらに,電気刺激で拍動ぺーシングを行った心室筋細胞に異なるタイミングで機械的刺激もしくは電気刺激を加えて期外収縮を発生させ,心筋細胞の不応期(刺激を加えても期外収縮を起こさない期間)の変化を調べた.その結果,不応期の長さがぺーシング周波数によって変化すること,電気刺激時の不応期は,機械刺激時より30 ms以上短いことを新たに見出した.
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