研究課題
1.細胞核と細胞骨格を結合するLINC複合体の内,ネスプリンをRNA干渉法により発現抑制した内皮細胞の繰り返し伸展刺激に対する形態応答を評価した.伸展刺激負荷後,無処理の細胞は伸展方向に対して垂直方向への配向性を示し,細胞内においても垂直方向へ太いアクチンフィラメント構造の形成が見られた.一方,ネスプリン-1またはネスプリン-2の発現を抑制した内皮細胞では伸展刺激負荷前に比べ細胞形態およびアクチンフィラメント構造に変化は見られなかった.この結果はネスプリンを介したアクチンフィラメントから細胞核への力学伝達が内皮細胞の形態応答に必要であることを示す.2.細胞核への力学伝達を評価するため,伸展負荷前後の細胞核形状を調べた.静置培養状態においてネスプリン-1発現抑制細胞の細胞核の幅は無処理の細胞に比べ減少していた.細胞核高さには変化が見られなかった.ネスプリン-1を発現抑制した細胞では,無処理の細胞に比べ伸展負荷時の水平方向ひずみが有意に増加した.一方,伸展負荷により細胞核には圧縮変形を生じる傾向がみられたが,無処理の細胞およびネスプリン発現抑制細胞間での差は見られなかった.3.原子間力顕微鏡を用いてアクチンフィラメントと細胞核の結合力の評価を行った.その結果ネスプリンの発現抑制により細胞核とアクチンフィラメントの結合力は大きく減少した.これらのことからアクチンフィラメントを介した細胞核への力学伝達は内皮細胞の形態応答に対して必須の働きを持つことが明らかになり,細胞核も力覚機構において重要な役割を持つことが示唆された.
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Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: Vol.424 (1) ページ: 94-99
DOI:10.1016/j.bbrc.2012.06.073
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