研究課題/領域番号 |
23650252
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
早瀬 敏幸 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (30135313)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 内皮細胞 / 応答特性 / 傾斜遠心力 / 流れ負荷 / 力学刺激 |
研究概要 |
平成23年度は、傾斜遠心力負荷実験装置による線形せん断応力負荷実験を行った。培養内皮細胞に任意方向の遠心力を負荷できる、申請者が独自に開発した傾斜遠心力負荷装置(現有)を用いた。内皮細胞の配向実験中、傾斜遠心顕微鏡の格納容器内は一定雰囲気に保たれる。実験方法は、まず試料容器内に内皮細胞を培養した後、傾斜遠心顕微鏡装置に設置して、48時間傾斜遠心力を与える。その際、6時間ごとに、倒立顕微鏡(オリンパス製IX71、現有)により、内皮細胞の配向状態を観察する。本年度は、実験中に培養液が不安定となり、正しい測定結果を得ることができなかった。次に、流れ負荷時の内皮細胞の配向実験を行った。この実験は、通常行われているものであり、ポンプにより培養液を循環させながら、培養内皮細胞チャンバー内にせん断流を発生させ、内皮細胞にせん断応力を負荷する構成である。流れ負荷実験は、格納容器内に設置し一定雰囲気中で実験を行った。傾斜遠心力実験と同様に、48時間実験を行い、6時間ごとに、倒立顕微鏡により内皮細胞の配向状態を観察するための予備実験を行った。上記の傾斜遠心力負荷実験と流れ負荷実験の結果との比較では、流れ負荷で内皮細胞に与えられる応力は、内皮細胞内で一定のせん断応力であり、遠心力で与えた線形的なせん断力の分布と異なるので、両者の配向の結果を比較することにより、内皮細胞がせん断応力を検知する部位による影響を明らかにする予定だったが、傾斜遠心力負荷実験の結果が得られなかったため、定量的な比較を行うことはできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画のうち、傾斜遠心力負荷実験装置による線形せん断応力負荷実験では、実験中に培養液が不安定となり、正しい測定結果を得ることができなかった。原因は、回転により培養液の液面が移動するのに対して、培養液が外部に漏れることを防止し、かつ酸素の補給が可能とするために設けたフィルタの設置部分に隙間が生じて、回転中に培養液が外部に流出したことによるものである。この問題は、試料容器を改良することにより解決できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究計画のうち、傾斜遠心力負荷実験装置による線形せん断応力負荷実験で、回転により培養液の液面が移動するのに対して、培養液が外部に漏れることを防止し、かつ酸素の補給が可能とするために設けたフィルタの設置部分に隙間が生じて、回転中に培養液が外部に流出したことにより、正しい結果が得られなかった問題に対しては、試料容器を改良して、高速回転の環境下でもフィルタの設置部分に隙間が生じないようにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、傾斜遠心力負荷時の内皮細胞の配向実験では、内皮細胞の傾斜角を水平状態から変化させて実験を行う。垂直に設置した場合は、垂直方向の応力状態となり、配向は生じない。遠心力がある角度を持つ場合は、垂直力とせん断力が同時に作用している場合であり、これまでこのような条件化での内皮細胞の配向が詳しく調べられた例はない。傾斜遠心力負荷実験と流れ負荷実験の結果を比較する。流れ負荷で内皮細胞に与えられる応力は、内皮細胞内で一定のせん断応力であり、遠心力で与えた線形的なせん断力の分布と異なるので、両者の配向の結果を比較することにより、せん断応力に対する応答が、内皮細胞内のどの部分で生じるかを解明する。また、斜め方向に作用する遠心力に対する内皮細胞の配向と比較することにより、垂直方向の応力(生体内では血圧に相当)の存在が、内皮細胞の力学応答に与える影響を明らかにする。
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